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連載 地域保健従事者のための精神保健の基礎知識・8
精神疾患についての国民意識
著者: 立森久照1
所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部
ページ範囲:P.701 - P.704
文献購入ページに移動前回は地域における精神疾患や精神保健の問題について,量的な側面から解説をしました.日本ではおよそ40人に1人が精神疾患の治療のために医療機関を利用しています1).さらに地域ではもっと多くの者が精神疾患を経験しており,その数は年間1,000万人以上と推定されています2).この数字は成人の気分障害・不安障害・物質使用障害に限ってのものですので,統合失調症などの他の精神疾患を有する方や,未成年で精神疾患を有する方を含めると,地域ではもっと多くの人数が精神疾患を経験しています.
こうした精神疾患を経験している人数だけからも,精神保健の問題が大きな課題であることがわかります.それに加えて,自殺関連行動やひきもこりなども,年間で何十万以上の方々がそれらを経験しています.
傷病の社会への影響の指標であるDALY3)によると,上位5つのうち3つが精神疾患とそれに関係が深いものでした.また疾患群で比較をすると,社会への影響が大きい傷病としてすぐに思い浮かぶ,がんや循環器系の疾患よりも,精神疾患の社会的影響が大きく,全体で最も影響が大きいものでした.
以上のように,精神疾患や精神保健は国民的な課題であることは明らかです.このことは精神保健領域で仕事をされている専門家の方々はよくご存じのことと思います.一方,地域住民の精神疾患や精神保健に対する認識はどうなのでしょうか.専門家のこうした認識を共有しているのでしょうか,それともそうではないのでしょうか.また精神疾患や精神保健について,地域住民はどのような意識や知識を持っているのでしょうか.
そうした点も含めて,今回は調査研究の結果をお示ししながら,地域住民の精神疾患や精神保健に対する知識や意識の現状と,これからの課題について述べたいと思います.
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