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連載 お国自慢―地方衛生研究所シリーズ・5
狂犬病の予防と対策:侵入リスクは0(ゼロ)ではない―鳥取県衛生環境研究所の調査研究テーマから
著者: 松本尚美12
所属機関: 1前鳥取県衛生環境研究所保健衛生室 2現鳥取県生活環境部くらしの安心局くらしの安心推進課
ページ範囲:P.717 - P.720
文献購入ページに移動狂犬病はラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルスによる人獣共通感染症であり,すべての哺乳動物が感染します.
日本では1947年に伝染病予防法に基づく狂犬病の患者届出が開始され,1949年には74名と最も発生が多かったのですが,1950年に狂犬病予防法が制定され,1957年のネコでの事例を最後に,国内からの狂犬病撲滅に成功しました.
その後は,1970年にネパールから帰国した青年が国内で発症したという輸入例1例が報告されていましたが,2006年にフィリピンから帰国した男性2名が帰国後相次いで狂犬病を発症し,36年ぶりの輸入事例となりました.
しかしながら世界ではアジア,アフリカを中心に,狂犬病による死亡者が年間50,000人以上と推定されています.そのうち56%がアジア諸国での発生と報告されており,患者の95%以上が,イヌからの咬傷により感染を受けています.
アジア地域での狂犬病清浄国は日本,台湾のみで,いまだに狂犬病は常在し,根絶されていないのが現状ですが,狂犬病発生国でイヌに咬まれて帰国後に発症するケースや,空路・航路によって狂犬病に感染した動物が国内に侵入するケース等,今後日本でも狂犬病がいつ発生してもおかしくない状況にあります.
さて,当鳥取県では狂犬病発生国の外国籍船の入港があり,乗船しているイヌの不法上陸の可能性があります.また,50年以上も発生のない狂犬病を的確に診断できる行政担当者や,検査担当者は残念ながらいません.そこで,万が一狂犬病が侵入した場合に,感染拡大を防ぐことができるのかという危機意識から,侵入リスクの低減や発生に備えた適切な対策が必要であると認識し,当県で狂犬病予防対策に関する調査研究を表のとおり実施することになりました.
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