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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生74巻8号

2010年08月発行

文献概要

映画の時間

花に話しかけ 木に耳をすませて 心のままに私は描く セラフィーヌの庭

著者: 桜山豊夫

所属機関:

ページ範囲:P.657 - P.657

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 裕福には見えない女性が,部屋の掃除をしているシーンから映画が始まります.家の主人らしい女性から残り物の食事を貰って帰ります.生活は苦しそう.どう見ても主役とは思えない,この中年の女性が,今月紹介する「セラフィーヌの庭」の主人公です.主人公セラフィーヌを演ずるヨランド・モローには失礼なことを書きましたが,冒頭のシーンから,観客はこの不思議な女性の雰囲気に引き込まれていきます.1人暮らしのセラフィーヌは軽度の精神発達遅滞のようです.食うや食わずの生活のなかでも,教会では聖歌を歌い,神を賛美する彼女ですが,仕事が終わると部屋にこもって,一心不乱に絵を描いています.彼女にとっては絵を描くことは神からの啓示であり,神を賛美することなのです.が,同時に絵を描くことで,彼女自身が癒されてもいるのでしょう.

 彼女の暮らすフランスの地方都市にドイツ人の画商ウーデ(ウルリッヒ・トゥクール)が静養のために訪れ,家政婦をしているセラフィーヌの描いた花の絵を見て感動します.彼女の才能を見抜いたウーデの勧めもあって,セラフィーヌは個展の開催を夢見て,絵を描き続けます.しかし第一次世界大戦,大恐慌,第二次世界大戦と続く時代のうねりは,セラフィーヌやウーデを呑みこんでいきます.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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