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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生74巻9号

2010年09月発行

文献概要

特集 分子遺伝疫学

分子遺伝疫学の倫理的課題と人権

著者: 森崎隆幸1

所属機関: 1国立循環器病研究センター研究所分子生物学部

ページ範囲:P.768 - P.771

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はじめに

 分子遺伝疫学は,20世紀末からのヒトゲノムプロジェクトにより研究が加速され,2003年にはヒトゲノム配列情報が決定されるに至った,ゲノム科学の発展をベースとしている.分子・遺伝子レベルで疾病リスクを明らかにできることが期待されている,発展の著しい研究領域である.一方で,ゲノム研究の急速な進展とともに,その倫理性の懸念や生命倫理の概念の理解と必要性が認識され,国外では20世紀末にゲノム医療と遺伝子との関係について種々の検討がなされ,国あるいは多国間で規範が制定されるようになっていた1~3)

 日本では21世紀にさしかかって,ようやく,国レベルでゲノム・遺伝子解析研究についての倫理規範の作成が行われるようになった4,5).その後,欧米同様,日本でも個人情報保護法が施行されたこともあり,研究者も国の指針や法についての認識が高まり,研究機関での倫理審査委員会の設置などが急速に進んだ.

 近年,国内外では,個人ゲノム情報を網羅的に積極的に利用する形でのゲノム研究が医療応用をめざして実施されるようになり,遺伝疫学は研究の中心と見据えられるようになった.さらに,研究の進展は,個人ゲノム情報をどのように捉え,どのように保護することが必要であるかについて,考え直す必要性を生んでいる.

 本稿では,個人ゲノム情報を扱う遺伝疫学の近年の進展と関連する倫理的問題について述べ,今後,どのように倫理的取扱いをすべきかについて論ずる.

参考文献

1) ユネスコ:ヒトゲノムと人権に関する世界宣言(文部科学省仮訳) http://www.mext.go.jp/unesco/009/005/001.pdf
2) 欧州評議会:人権と生物医学に関する条約 http://conventions.coe.int/Treaty/en/Treaties/Html/164.htm
3) WHO:遺伝医学と遺伝サービスにおける倫理的諸問題に関して提案された国際ガイドライン(和訳) http://jshg.jp/resources/data/WHOguideline.pdf
4) 科学技術会議生命倫理委員会「ヒトゲノム研究に関する基本原則」 http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/seimei/gensokuj.pdf
5) 厚生労働省・文部科学省・経済産業省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」 http://www2.ncc.go.jp/elsi/index.htm
6) 遺伝カウンセリング・出生前診断に関するガイドライン(日本人類遺伝学会会告) http://jshg.jp/introduction/notifications/19941200.html
7) 遺伝性疾患の遺伝子診断に関するガイドライン(日本人類遺伝学会会告) http://jshg.jp/introduction/notifications/19950900.html
8) 文部科学省・厚生労働省「疫学研究に関する倫理指針」 http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/37_139.pdf
9) ユネスコ:ヒト遺伝情報に関する国際宣言(文部科学省仮訳) http://www.mext.go.jp/unesco/009/005/004.pdf
10) ユネスコ:生命倫理と人権に関する世界宣言(上智大学IBC事務局仮訳) http://www.mext.go.jp/unesco/009/005/005.pdf
11) ユネスコ:「同意」に関する報告書 http://unesdoc.unesco.org/images/0017/001781/178124e.pdf
12) OECD理事会勧告「ヒトのバイオバンクおよび遺伝学研究用データベースに関するOECDガイドライン」(JBA仮訳) http://www.jba.or.jp/report/international/document/pdf/HBGRD%20Guidelines%20jp_JBA201003.pdf
13) ヘルシンキ宣言ソウル改訂(世界医師会)(日本医師会和訳) http://dl.med.or.jp/dl-med/wma/helsinki2008j.pdf

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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