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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生74巻9号

2010年09月発行

文献概要

特集 分子遺伝疫学

ライフスタイル医学と分子遺伝疫学

著者: 竹下達也1

所属機関: 1和歌山県立医科大学医学部公衆衛生学教室

ページ範囲:P.772 - P.775

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生活習慣病発症にかかわる遺伝・環境要因

 近年の分子生物学の学問および技術の発展を背景として,人間の形質あるいは健康度の遺伝的背景が急速に解き明かされようとしている.そこで問われるのは,それぞれの疾病発症にかかわる遺伝要因と,環境要因の相対的割合である.遺伝要因と環境要因の割合について強力なエビデンスを提供するのが,一卵性および二卵性双生児を比較する疫学研究である.欧米の知見ではあるが,循環器疾患,がんをはじめとする様々な疾患における遺伝・環境要因の割合は,おおむね図1に示すような結果を示唆している.単一遺伝病の場合には単一の,あるいはごく少数の主要な遺伝子が決定的に関与しているのに対して,事故や感染症にかかわる遺伝子を発見するのは困難である.生活習慣病の中では,大まかに言うと,糖尿病や循環器疾患においては遺伝・環境要因が相半ばするのに対して,がんの発症には,環境要因に比べて遺伝要因の関与は比較的小さいとされている.

 そこで生活習慣病の発症要因を考える際には,遺伝要因と同等,あるいはそれ以上に大きな影響を与える環境要因(その大部分はライフスタイル要因)の関わりについて考察することが,研究および予防対策の重要な前提条件となる.

参考文献

1) 森本兼曩,星旦二(訳):生活習慣と健康―ライフスタイルの科学.HBJ出版局,1989
2) van Dam RM, Li T, Spiegelman D, et al:Combined impact of lifestyle factors on mortality;prospective cohort study in US women. BMJ 2008 Sep 16:337:a1440. doi:10.1136/bmj. a1440.
3) 日高敏隆,他(訳):利己的な遺伝子〈増補新装版〉.紀伊國屋書店,2006
4) 竹下達也:飲酒行動を決定する遺伝要因とその健康影響.日本衛生学雑誌54:450-458, 1999
5) 竹下達也:飲酒.分子予防環境医学研究会(編);分子予防環境医学―生命科学研究の予防・環境医学への統合.本の泉社,2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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