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文献概要
連載 トラウマからの回復─患者の声が聞こえますか?・10
“被害者”をやめたら,前に進みたくなった
著者: 橋本寛子1 麻生英子1
所属機関: 1NPO法人JUST(トラウマ・サバイバーズ・ユニオン)
ページ範囲:P.60 - P.63
文献購入ページに移動橋本寛子さんが性被害に遭ったのは,11歳のときだった.当時,寛子さんの一家は,母親の姉夫婦とごく近所に暮らしており,1つの家族のように生活していた.寛子さんは姉,弟に挟まれた第2子で,父の関心は姉に,母の愛情は弟に注がれていたと感じており,伯母夫婦を慕っていた.叔父も息子しかいなかったからか,寛子さんをとても可愛がっていた.しかし,その叔父がSA(sexual abuse)の加害者となった.
「小学校6年生の夏休み,叔父の実家を訪ねる九州旅行に同行したときに,その事件は起こりました.その時,なぜか伯母は一緒に行かず,叔父,叔父の長男,私,弟の4人でした.初日の夜,叔父は私のふとんに入ってきて,胸を触り,腟に指を入れてきました.性器の挿入の手前までいったところで私は逃げ出しました.旅行の残りの数日が苦痛でなりませんでした.お風呂に一緒に入ることを拒絶すると,ものすごい剣幕で怒られました.九州からの帰りの電車で,“おじちゃんが触ったことは,両親にも誰にも言ってはいけないよ”という内容の手紙をもらい,すごく恐ろしく感じました」.
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