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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生75巻10号

2011年10月発行

文献概要

特集 睡眠と健康

睡眠研究の進歩

著者: 井上昌次郎1

所属機関: 1東京医科歯科大学

ページ範囲:P.751 - P.754

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なぜ最近になって睡眠研究は進歩したのか

 「睡眠とは何か」という問題は,有史以来人々の大きな関心のひとつであった.それはまた,生命そのものを問うことでもあり,さらには死について洞察することでもあった.睡眠にまつわる夢をどのように解釈するかという議論もそうであった.こうして,睡眠や夢は古くから神話,宗教,政治,文芸の研究対象になっており,世界各地でそれぞれの文化を背景にしてさまざまに取り扱われてきた.不眠や眠気に関連するいわゆる睡眠障害も,医療の立場から重要な研究対象であった.つまり,睡眠研究はその原点からすでに,あらゆる社会とあらゆる学芸にかかわる総合的な学問の性質を持っていたのである1)

 とはいえ,「睡眠とは,生とは,死とは,夢とは,睡眠障害とは,このようなものである」という説明に対して,たといそれがその時代の最先端を行く権威あるものであったとしても,人々は納得したためしがない.なぜなら,自然哲学ないし自然科学の無力さから,これらの問題については,いつの時代も不完全な認識しか得られなかったからである.睡眠研究の進歩を阻んだ大きな理由は,再現性・客観性を証明する方法論がなかったことである2)

参考文献

1) 井上昌次郎:眠りを科学する.朝倉書店,2006
2) 井上昌次郎:睡眠論の系譜と睡眠学の発展.睡眠学(日本睡眠学会編),pp1-9,朝倉書店,2009
3) 宮崎総一郎,大川匡子:睡眠学とは.睡眠教室―夜の病気たち(宮崎総一郎,井上雄一編),pp24-27,新興医学出版社,2011
4) 日本睡眠学会(編):睡眠学.朝倉書店,2009
5) 櫻井武:睡眠の科学.講談社,2010
6) 宮崎総一郎,井上雄一(編):睡眠教室―夜の病気たち.新興医学出版社,2011
7) 堀忠雄:決定版 安眠健康術―すぐ実行できるこんな方法.海竜社,2011
8) 堀忠雄,白川修一郎(監修),日本睡眠改善協議会(編):睡眠改善学.ゆまに書房,2008
9) 高田公理,堀忠雄,重田眞義(編):睡眠文化を学ぶ人のために.世界思想社,2008
10) 井上昌次郎:眠る秘訣.朝日新聞出版,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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