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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生75巻10号

2011年10月発行

文献概要

特集 睡眠と健康

高齢者の睡眠

著者: 内山真1

所属機関: 1日本大学医学部精神医学系精神医学分野

ページ範囲:P.779 - P.783

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はじめに

 高齢者には睡眠障害が多い.本邦での一般人口を対象とした疫学的調査では,成人の21.4%に入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒のいずれかの不眠が見られている1).この頻度は,20および30代では18.1%で,40および50代においても18.9%と大きく変わらないが,60歳以上では29.5%になる.不眠のタイプ別で見ると,60歳以上になるといずれの不眠においても若年成人や中年と比べ頻度が高くなるが,中途覚醒や早朝覚醒では若年成人のほぼ倍になる(図1).過去1か月間に睡眠薬を使用した人の頻度は,日本において男性で3.5%,女性で5.4%であった2).この睡眠薬使用頻度も,不眠と同様に高齢になるほど高くなる2)

 高齢者の睡眠障害は,睡眠時無呼吸症候群,むずむず脚症候群,周期性四肢運動障害などの身体的要因による睡眠障害の頻度が高いことが特徴である.さらに高齢者においては,うつ病による不眠が多く見られることも臨床的に重要である.高齢者特有の生活スタイルや心理社会的な問題が不眠を引き起こしている場合も多い.睡眠障害のケアにあたっては,このような高齢者の特性を踏まえておく必要がある.本稿では,これらの点について臨床的に展望する.

参考文献

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2) Doi Y, Minowa M, Okawa M, Uchiyama M:Prevalence of sleep disturbance and hypnotic medication use in relation to sociodemographic factors in the general Japanese adult population. Journal of Epidemiology 10:79-86, 2000
3) 日本睡眠学会診断分類委員会(訳):睡眠障害国際分類第2版.日本睡眠学会,2010
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6) Fava M, McCall WV, Krystal A, et al:Eszopiclone co-administered with fluoxetine in patients with insomnia coexisting with major depressive disorder. Biol Psychiatry 59:1052-1060, 2006
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9) 内山真:不眠症薬物療法の問題点とその対策.臨床精神薬理9:1971-1983, 2006
10) 内山真:睡眠薬.山田信博(編):治療薬イラストレイテッド改訂版,pp245-249,羊土社,2009
11) 内山真,金野倫子:新規睡眠薬の可能性;メラトニン受容体作動薬.臨床精神薬理11:2041-2053, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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