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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生75巻11号

2011年11月発行

文献概要

連載 地域づくりのためのメンタルヘルス講座・8

精神医療の取り組みについて教えて下さい

著者: 野田哲朗1

所属機関: 1大阪府立精神医療センター

ページ範囲:P.884 - P.888

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はじめに

 日本の医療自体は世界水準を凌駕していると言えるが,こと精神医療に関しては声だかに語ることが難しい.気がつくと,先進国で人口あたりの精神病床数が最も多く,つい最近まで,入院中心の精神医療をよしとしてきたからである.

 儒教的な仁愛思想が根付く日本では,明治以前,精神障害者は私宅監置されるか,コミュニティから離れて放浪することはあっても彼らを隔離収容するといった発想はなかった.明治5(1873)年ロシア皇太子アレクセイ来日に際し,乞食,浮浪者を排除することを目的に養育院が作られ,そこに精神障害者用の部屋が設けられたことが,のちの東京府巣鴨病院(東京都立松沢病院の前身)に発展していく.しかし,発展途上にあった戦前の日本では精神科病院は増えず,現在ある約1,600の精神科病院の多くが,1950年代以後の開設であり,精神科病床を削減し,精神障害者の地域処遇に向かった欧米の潮流と逆行することになってしまった(図1).

 本稿では,日本の精神医療がなぜガラパゴス化したのかを踏まえ,現在,これからの精神医療の取り組みについて論じる.

参考文献

1) 岡田靖雄:呉秀三 その生涯と業績.思文閣出版,1982
2) 精神科医療史研究会(編):長山泰政先生著作集.長山泰政先生著作集刊行会,1994
3) 野田哲朗,古塚大介:大阪の精神科救急医療システムの現状と展望.精神科救急13:90-99, 2010
4) 赤澤正人,他:アルコール関連問題を抱えた自殺既遂者の心理社会的特徴;心理学的剖検を用いた検討.日本アルコール・薬物医学会雑誌45(2):104-118, 2010
5) Marshall M, et al:Association between duration of untreated psychosis and outcome in cohorts of first-episode patients;a systematic review. Arch Gen Psychiatry 62:975-983, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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