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連載 地域づくりのためのメンタルヘルス講座・8
精神医療の取り組みについて教えて下さい
著者: 野田哲朗1
所属機関: 1大阪府立精神医療センター
ページ範囲:P.884 - P.888
文献購入ページに移動日本の医療自体は世界水準を凌駕していると言えるが,こと精神医療に関しては声だかに語ることが難しい.気がつくと,先進国で人口あたりの精神病床数が最も多く,つい最近まで,入院中心の精神医療をよしとしてきたからである.
儒教的な仁愛思想が根付く日本では,明治以前,精神障害者は私宅監置されるか,コミュニティから離れて放浪することはあっても彼らを隔離収容するといった発想はなかった.明治5(1873)年ロシア皇太子アレクセイ来日に際し,乞食,浮浪者を排除することを目的に養育院が作られ,そこに精神障害者用の部屋が設けられたことが,のちの東京府巣鴨病院(東京都立松沢病院の前身)に発展していく.しかし,発展途上にあった戦前の日本では精神科病院は増えず,現在ある約1,600の精神科病院の多くが,1950年代以後の開設であり,精神科病床を削減し,精神障害者の地域処遇に向かった欧米の潮流と逆行することになってしまった(図1).
本稿では,日本の精神医療がなぜガラパゴス化したのかを踏まえ,現在,これからの精神医療の取り組みについて論じる.
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