icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生75巻12号

2011年12月発行

文献概要

沈思黙考

「合理主義」の限界

著者: 林謙治1

所属機関: 1国立保健医療科学院

ページ範囲:P.941 - P.941

文献購入ページに移動
 最近,私がかかわっている保健医療分野の学会はじめ公益団体や組織のどこを見ても,予算が払底しているとか運営資金がショートしているという話ばかりである.いや,国内ばかりでなく,欧米が中心となっている団体組織,果ては国連関係までも事情が同じのようである.そういうこともあってか,資金調達についての助言やアイディアを求められることが多く,さりとて世の中全体が不景気の中で特段妙案が浮かぶわけではない.以前なら権威ある国際組織から招待を受けると大変名誉に感じて勇んで出かけたものである.しかし近年は真意を確認できるまで,どうしても躊躇せざるを得ないのである.この中で,今までむしろ招待を求めていた途上国が,逆に「ぜひ招待したい」と申し出るのに驚きを感じる.韓国はしばらく前から経済力がついていたので珍しくはないが,中国,ベトナム,タイ,マレーシアも積極的に外国のゲストを迎えるようになった.

 話は変わるが,第二次世界大戦後一人勝ちしたアメリカは,アメリカ流の民主主義という政治システムを普遍的な価値を持った政治体系とみなして国際的に影響を及ぼす努力をしてきた.現実の世界を見てわかるように,うまくいった国もあれば,かえって混乱に陥った国もある.私は政治学者でないので複雑な要素を勘案しながら評価する能力を持ち併せていないが,素人としての感想を述べさせていただければ,アメリカでは物事を処理する際になるべく合理的に説明できるようにふるまう傾向がある.しかし世の中は利益相反に満ちており,つねに合理的に解決できるとは限らない.合理性を表面的にあくまで主張した場合,結局武力に訴えることもあって,本来の合理性は意味を失い,自己矛盾に陥ってしまう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら