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特集 医薬品・ワクチン開発をめぐる諸課題
わが国におけるワクチン開発と生産供給のしくみ
著者: 畑美郁1 奥野良信2
所属機関: 1一般財団法人阪大微生物病研究会 2一般財団法人阪大微生物病研究会観音寺研究所
ページ範囲:P.104 - P.108
文献購入ページに移動2009年5月,神戸市で,新型インフルエンザA型(H1N1)の国内発生が初めて確認され,その後,日本全国に流行が波及することとなった.この新型インフルエンザウイルスに対しては,例年広く接種されている季節性インフルエンザワクチンの予防効果は期待できないとされ,直ちに新型インフルエンザワクチンの開発と製造が世界各国で開始された.わが国でも,4メーカーが従来の季節性インフルエンザワクチンの製造方法を踏襲した製造を開始し,2009年10月19日より,医療従事者を始めとした優先接種対象者に接種が始まった.この時,国内4メーカーの年度内でのワクチン供給可能量は,約2,700万人分(2回接種を想定)と十分な量ではなく,輸入が実施された.
輸入に当たっては,通常の薬事審査を経た上ではなく,緊急性が重視された「特例承認」による製造販売承認が適用された1).結果的に市場のワクチンは国内産,輸入品問わず過剰となったが,この緊急輸入は,国民をパンデミックから守るための迅速な措置として一定の評価は与えられるべきであると考えられる.しかし一方,世界的にもパンデミックの終息宣言がなされた今,国策としてのワクチン生産体制の問題点が注目されるきっかけともなっている.
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