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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生75巻2号

2011年02月発行

文献概要

特集 医薬品・ワクチン開発をめぐる諸課題

わが国におけるワクチン開発と生産供給のしくみ

著者: 畑美郁1 奥野良信2

所属機関: 1一般財団法人阪大微生物病研究会 2一般財団法人阪大微生物病研究会観音寺研究所

ページ範囲:P.104 - P.108

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はじめに

 2009年5月,神戸市で,新型インフルエンザA型(H1N1)の国内発生が初めて確認され,その後,日本全国に流行が波及することとなった.この新型インフルエンザウイルスに対しては,例年広く接種されている季節性インフルエンザワクチンの予防効果は期待できないとされ,直ちに新型インフルエンザワクチンの開発と製造が世界各国で開始された.わが国でも,4メーカーが従来の季節性インフルエンザワクチンの製造方法を踏襲した製造を開始し,2009年10月19日より,医療従事者を始めとした優先接種対象者に接種が始まった.この時,国内4メーカーの年度内でのワクチン供給可能量は,約2,700万人分(2回接種を想定)と十分な量ではなく,輸入が実施された.

 輸入に当たっては,通常の薬事審査を経た上ではなく,緊急性が重視された「特例承認」による製造販売承認が適用された1).結果的に市場のワクチンは国内産,輸入品問わず過剰となったが,この緊急輸入は,国民をパンデミックから守るための迅速な措置として一定の評価は与えられるべきであると考えられる.しかし一方,世界的にもパンデミックの終息宣言がなされた今,国策としてのワクチン生産体制の問題点が注目されるきっかけともなっている.

参考文献

1) 医薬食品局審査管理課:審議結果報告書(平成21年12月26日),厚生労働省HP
2) 厚生労働省:第7回新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議資料
3) 厚生労働省:新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種の基本方針(平成21年10月1日)
4) 厚生労働省:第1回ワクチン産業ビジョン資料(平成19年3月22日)
5) 木村三生夫,他:予防接種の手引き 第12版.近代出版,2008年11月10日
6) Recommended viruses for influenza vaccines for use in the 2011 southern hemisphere influenza season;WHO HP
7) IASR:平成22年度(2010/11シーズン)インフルエンザワクチン株の選定経過.国立感染症研究所感染症情報センター31:262-264, 2010年9月号
8) Kistner O, et al:Development of a Vero cell-derived influenza whole virus vaccine. Dev Biol Stand 98:101-110, discussion 111, 1999
9) Brans R, et al:Influvac;a safe Madin Darby Canine Kidney(MDCK)cell culture-based influenza vaccine. Dev Biol Stand 98:93-100, discussion 111, 1999
10) Gregersen JP:A quantitative risk assessment of exposure to adventitious agents in a cell culture-derived subunit influenza vaccine. Vaccine 26(26):3332-3340, 2008 Jun 19
11) 山本貴仁:付着性MDCK細胞を基質としたインフルエンザワクチンの開発.Medical Science Digest 447:26-29, 2008年34巻12月号
12) Pau MG, et al:The human cell line PER. C6 provides a new manufacturing system for the production of influenza vaccines. Vaccine 19(17-19):2716-2721, 2001 Mar 21
13) 特集「ワクチンビジネス勃興」.Yakugyo Jiho, 2010年8月10日

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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