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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生75巻3号

2011年03月発行

文献概要

フォーラム

公衆衛生的視点から緩和ケア,グリーフの臨床を考える

著者: 岩本喜久子1 山上実紀2

所属機関: 1札幌医科大学寄附講座緩和医療学 2一橋大学大学院社会学研究科

ページ範囲:P.253 - P.255

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公衆衛生的緩和ケアという概念について

 2009年のカナダ緩和ケア学会やAsia Pacific Hospice Network学会で「Palliative care in public health:公衆衛生における緩和ケア」という言葉をよく耳にした.WHOが2006年に発表したCancer Control Knowledge Into Actionの中でも,“palliative care with a public health approach”という表現が頻繁に使われている1).日本では緩和ケアというと,病気による苦痛を医学的介入によって緩和するという臨床医学としての捉えが一般的である.しかし,ここで言及された緩和ケアの捉え方は,いまだ病気や疾病を持たない市民,もしくは緩和ケアを今現在必要としていない患者を含めた,生活者,共同体をもケアの対象としている.言いかえると,緩和ケアは,疾病になる前,緩和ケアが必要となる前に,人々の健康増進を図ることを目的として,一般市民を対象とした組織的な衛生活動・啓蒙活動が必要であるとしているのだ.

 かつて公衆衛生は,1949年にウィンスロウによって「共同社会の組織的な努力を通じて,疾病を予防し,寿命を延長し,身体的・精神的健康と能率の増進を図る科学・技術である」と定義された.緩和ケアを社会に生きる全ての個人の身体的・精神的健康と能率の増進のための技術として捉えると,公衆衛生の考え方と矛盾はない.

参考文献

1) Cancer Control Knowledge into Action. WHO Guide for Effective Programmes Palliative Care http://www.who.int/cancer/modules/en/
2) World Health Organization http://www.who.int/cancer/palliative/en/
3) 緩和ケア普及のための地域プロジェクトOPTIM http://gankanwa.jp/
4) 坂口幸弘,恒藤暁,柏木哲夫,他:わが国のホスピス・緩和ケア病棟における遺族ケアの提供体制の現状.心身医学44(9):697-703, 2004
5) 町田いづみ,保坂隆:グリーフワーク~遺族ケアの重要性.緩和医療学6(4):65-68, 2004
6) 広瀬寛子:遺族ケア.緩和医療学10(4):21-27, 2008
7) 白井明美,小西聖子:PTSDと複雑性悲嘆との関連~外傷的死別を中心に.トラウマティックストレス2(1):21-27, 2008
8) 瀬籐乃理子,丸山総一郎,加藤寛:複雑性悲嘆(CG)の診断基準化に向けた動向.精神医学50(11):1119-1133, 2008
9) Kellehear A:The end of death in late modernity;an emerging public health challenge. Critical public health 17(1):71-79, 2007
10) Small N:Theories of grief;a critical review. J Hockey, J Katz, N Small(eds):Grief, mourning and death ritual. pp19-48, Open University Press, Buckingham, 2001
11) Genevro J:Report on bereavement and grief research. Death Studies 28:491-575, 2004
12) Raphael B, Middleton W, Martinek N, et al:Counseling and therapy of the bereaved. Stroebe M, Hansson R, Stroebe W, et al(eds):Handbook of Bereavement Resarch;Consequences, coping and care. pp427-453, NY, Cambridge, 1993
13) Parkes CM:Editorial. J Bereavement Care 17:18, 1998
14) Stroebe M, Schut H, Stroebe W:Health outcomes of bereavement. Lancet 370:1960-1973, 2007
15) Rando TA:Treatment of complicated mourning. Champaign IL, Research Pr, 1993

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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