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連載 トラウマからの回復─患者の声が聞こえますか?・14【最終回】
生存スキルとしての精神障害
著者: 斎藤学1
所属機関: 1家族機能研究所
ページ範囲:P.416 - P.418
文献購入ページに移動アディクション(嗜癖,依存症)はラテン語に由来する古い言葉で,「ものごとに取り憑かれている」ことを意味する.医学的にはオピウム(阿片)などの物質を摂取することへの執着について用いられてきたが,近年では衝動的な過食(ムチャ食い)や自傷などの自己破壊行動,非合理な窃盗反復や賭博癖など,あらゆる「やめられない,止まらない」問題がこの言葉で包括されるようになった.
依存症という用語をこのように狭義の医学を超えて用いるようになったのは,時代がそれを必要としたからなのであって,単なる誤用とは言えない.この時代,人々はかつてなら個人の悪徳としていたものを技術用語で呼び,疑似科学的に処理することを好むようになった.以前なら「大酒飲み」と呼ばれていた「意志の弱い人の悪習慣」は,現在では「アルコール依存症」と呼ばれ,診療の対象になっている.これを「医療化」と言う.
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