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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生75巻6号

2011年06月発行

雑誌目次

特集 基礎から学ぶ環境衛生

フリーアクセス

ページ範囲:P.435 - P.435

 わたしたちの日常生活に密接な関わりを持つ環境衛生関係営業施設は,理容師法,興行場法,旅館業法,公衆浴場法等に基づき監視指導されています.また,飲料水,プール,墓地,温泉利用施設等の施設についても法整備が行われ,保健所による法令等に基づく監視指導や,知識の普及啓発等により,身の周りの環境衛生水準の向上が図られてきました.

 しかし,今,環境衛生を取り巻く状況は大きく変化しています.カビ,ダニ,有害化学物質等によるアレルギー疾患や,いわゆるシックハウス症候群など,近年,住まいに起因する健康影響に対する住民の関心や不安が高まっています.また,社会福祉施設におけるレジオネラ属菌や飲用井戸におけるO157などを原因とする感染症の集団発生など,環境衛生関係法令の対象外施設において,住民の健康を脅かすような状況も生まれています.

東京都の建築物衛生行政

著者: 木原真隆

ページ範囲:P.436 - P.442

東京都のビル衛生検査体制の変遷

 昭和45年の建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下「建築物衛生法」という)制定に伴い,衛生局(現福祉保健局)は,昭和46年度から公衆衛生部環境衛生課に建築物係を設置するとともに,特定建築物の立入検査の専従組織として,ビル衛生検査班を発足させた.ビル衛生検査班は,当初,都内を5ブロックに分け,保健所等に分駐し,5班体制で検査に当たっていたが,昭和48年の建築物衛生法施行令改正(法制定時は,延べ面積8,000m2以上)により,対象が延べ面積5,000m2以上のビルに拡大されたため,所管施設の増加に対応し,昭和49年度からは6班体制となった.その後,昭和51年に対象が延べ面積3,000m2以上となったが,昭和58年4月1日には,特別区内にある延べ面積5,000m2以下の特定建築物については,特定建築物の監視指導業務が特別区長に委任された.

 平成2年8月の組織改正により,ビル衛生検査班は,広域かつ高度・専門的な監視指導を実施する機関として新たに創設された食品環境指導センター建築物衛生課に集中化され,分駐が廃止された.平成12年4月1日からは,特別区内にある延べ面積10,000m2以下の特定建築物について,監視指導業務が特別区に事務移譲されている.

新しい「住まいと健康」問題と公衆衛生技術者のアプローチ

著者: 鈴木晃

ページ範囲:P.443 - P.447

「住まいと健康」問題の変遷と公的介入の根拠再考

 住居衛生という言葉を使わずに,なぜ「住まいと健康」あるいはHealthy Housingという言葉で今後を展望しようとしているのか.その疑問に答えるためにも,はじめにこの問題の歴史的変遷について簡単に触れておきたい.

 この問題が最初に社会問題化したのは19世紀イギリスで,産業革命にともなう都市への労働者人口の集中によって,劣悪な居住環境がもたらされたことは周知のとおりである.廃棄物や下水の適切な処理手段のない居住地に不良住宅が密集して建てられ,換気設備がなく暖房もない部屋や湿った地下室で,複数世帯が生活を共にすることを余儀なくされていた1,2).この時期の,すなわち古典的な「住まいと健康」問題は,不衛生な住宅あるいは過密居住など不衛生な住み方を原因とする感染症の問題としてとらえることができる.チャドウィックが社会防衛として環境衛生の強力な推進を訴え,公衆衛生法の立法化(1848年)を促すなど,近代公衆衛生の出発点となったことも知られている3).少し遅れて,最初の住居法である「トーレンス・アンド・クロス法(職人・労働者住居法)」(1868年)が法制化されており,公衆衛生と住宅問題が不可分に結びついていたことを示唆している.

水道水の安全確保に関する現状と課題

著者: 片山浩之

ページ範囲:P.448 - P.451

水道の社会的効能

 水道は,清浄で豊富低廉な水を供給するように法律で義務付けられている.そのため,必要な水量を満たすきれいな水源を確保し,浄水場において必要に応じて水処理を行い,各家庭に輸送する.水道料金は地域ごとにばらつきがあるが,ペットボトルの水1lはだいたい200円,水道水1m3は200円程度であることを考えると,水道水はペットボトルの約1/1000の価格で供給されている.

 直接飲用や料理に使用するのみでなく,シャワーやお風呂などにおける沐浴や,目や傷口を洗う目的にも使用されており,清浄な水が常に使用可能であることのメリットは非常に大きい.以下では,主に水道水中の微生物に関する安全について解説する.

衛生害虫と昆虫媒介感染症

著者: 小林睦生

ページ範囲:P.452 - P.455

はじめに

 蚊によって媒介される感染症には,フィラリア症,マラリア,日本脳炎,デング熱,ウエストナイル熱などが知られている.その中でマラリアは世界で最も患者数が多く,感染症の重点対策を推進すべき疾患としてWHO(世界保健機関)がリストアップしている.

 さて,人類が密閉性の高い材料で住宅を建築することが可能となり,安定した住環境に様々な昆虫やダニが侵入し始めた.その空間は,雨,風から守られ,温度もある程度一定に保たれている.しかし,密閉性は保たれておらず,屋外から種々の昆虫類が侵入することは可能であった.もともと野外で生息していた昆虫類が安定した環境に侵入してきたことから種々問題が生じ始めており,その典型的な例がゴキブリである.人の生活によって生産される廃棄物や汚物がハエ類の誘引源となり,人の臭いや体表から発散する炭酸ガスが雌蚊の吸血行動を惹起する.人の頭髪に寄生して生活するアタマジラミや衣服に寄生するコロモジラミは,人と密接に生活する方法を進化の過程で獲得した.このように,衛生害虫は様々な環境に巧みに適応し,彼らの生態的地位を確立したのである.

弱者と衛生害虫―自ら対応が困難な者の実態

著者: 矢口昇

ページ範囲:P.456 - P.459

はじめに

 人の健康と安全を損なう有害な昆虫等を衛生害虫と称し,公衆衛生学や衛生行政では,ねずみ族と合わせて「ねずみ・衛生害虫」もしくは,「そ族昆虫等」と表す場合が多い.

 過去においては,感染症を媒介するハエやカ,シラミ,ノミ,ねずみ等がその代表的なものであったが,現在では,その存在が不快であるなどの精神的要素も入り込み,近年では様々な害虫を対象として,地域住民からの相談を保健所等で受けることが多くなってきている.

 わが国は,戦後の一時期からすると,下水道の整備や汲み取り便所の水洗化,ゴミ収集運搬・処分等の改善,衛生教育の推進などにより,生活における衛生環境は格段に向上し,併せて有害な害虫も激減してきた.

 しかしその一方で,社会状況の変化に伴い,新たな問題が発生してきている.外の人の力を借りなければ自らの生活や自立が困難な,社会的弱者とされる高齢者や子ども・障害者・路上生活者,生活保護を受ける者などを対象とした,ねずみや衛生害虫に関する相談の増加である.

 本稿では,このような「ねずみ・衛生害虫」に関わる新たな問題について,実態とともに考察していくこととする.

浴場や環境中からのレジオネラ感染

著者: 倉文明

ページ範囲:P.460 - P.464

レジオネラ属菌

 レジオネラは水中や湿った土壌中に存在するありふれたグラム陰性菌で,アメーバに寄生して増殖する1).レジオネラを含んだエアロゾルや粉塵を吸い込むことにより,感染して肺炎やインフルエンザ様の発熱(ポンティアック熱)を引き起こす.ヒトからヒトへの感染はない.ヒトの体内では主としてマクロファージ内で増殖する.培養陽性例のヒトの起因菌の約9割はLegionella pneumophila(以下Lp)である2).レジオネラのコロニーはカットグラス様で,レジオネラ属以外の菌と区別しやすい3)

大地震等の災害時における環境衛生対策

著者: 五味武人 ,   竹内彦俊 ,   鈴木晃 ,   八木憲彦 ,   中島二三男 ,   奥田博子

ページ範囲:P.465 - P.470

はじめに

 平成20~21年度の厚生労働科学研究「地域健康危機管理に従事する公衆衛生行政職員の人材開発及び人員配置に関する研究」,平成22年度の同研究「地域健康安全を推進するための人材養成・確保のあり方に関する研究」[両研究とも研究代表者:曽根智史(国立保健医療科学院)]に参加し,健康危機事例を基に,行政に勤務する公衆衛生職員の役割を検討する機会を得た1,2)

 この研究成果から,大地震等の発生時における環境衛生監視員の役割と,関係職種,特に保健師との連携について述べるとともに,霧島連山の新燃岳噴火災害において,宮崎県都城保健所が本研究成果を活用した事例を紹介する.

墓地の動向を俯瞰する

著者: 横田睦

ページ範囲:P.471 - P.475

 編集部より,わが国における「お墓」のアウトラインをまとめて欲しい,という要望を受けました.しかし,どういった語り方でまとめれば,誤解を受けず,かつ,包括的なお墓の姿を理解してもらえるのか……これはかなり難しい問題です.たとえば,メディアで語られるトピックのような「葬り方」,撒骨や宇宙葬,樹木葬に永代供養墓……などは,極めて局所的あるいは限定的な現象でしかないことは,皆さんも「感じて」おられるところでしょう.お墓の「これから」の議論を進める前に,「これまで」のお墓について,振り返っておく必要があるのではないかと考えました.

 まず,公園式墓地(定義としては漠然としていますが,ここでは「ある程度の規模を有し,充分に植栽などがある庭園風の墓地」と考えることとします),特に民営の公園式墓地が生まれることとなった経緯を整理してみることとします.

視点

今後の健康づくり―生活習慣病予防―介護予防のあり方

著者: 富永祐民

ページ範囲:P.432 - P.433

成人病予防対策から生活習慣病予防対策へ

 わが国では1960年頃に「成人病」の概念が生まれ,大阪府立成人病センターをはじめとして各地に成人病センターが設置された.「成人病」は老年病と同義語で用いられ,老化(高齢化)が主な原因であると見られていた.当時はまだ脳卒中,虚血性心疾患,がんなどの危険因子が十分解明されていなかったために,定期検診による疾患の早期発見と早期治療が重視されていた.その後疫学的研究が進み,これらの成人病の危険因子や予防因子が解明され,生活習慣が疾患の発生に密接に関わっていることが明らかにされてきた.厚生労働省が成人病を「生活習慣病」と呼び変えたのは1997年であるが,日野原重明博士はすでに20年前の1977年に,喫煙,食生活,運動などの生活習慣が心臓病の原因になっており「習慣病」であると指摘しておられる(日野原重明:文明は心臓病をむしばむ,『中央公論』1977年12月号,120-131頁).もちろん生活習慣病のすべてが生活習慣に起因しているわけではないが,生活習慣が主な原因になっているので,生活習慣を是正することによって生活習慣病の予防が可能である.例えば,肺がんの約7~8割は喫煙が原因であると推計されているが,実際に欧米先進国では喫煙率の低下に伴って肺がんの死亡・罹患率が低下している.

 がん,虚血性心疾患,脳卒中,糖尿病などの生活習慣病の危険因子はそれぞれ異なっている部分もあるが,喫煙,多量飲酒,不適切な食生活,運動不足など,各疾患に共通する生活習慣も多く,適切な生活習慣により一連の生活習慣病の予防が可能になる.厚生労働省は健康日本21の中間評価の結果も踏まえて,2005年に生活習慣病予防のための標語として「1に運動,2に食事,しっかり禁煙,最後にくすり」を提唱している.

連載 人を癒す自然との絆・23

震災のあと―それでも花は咲く

著者: 大塚敦子

ページ範囲:P.476 - P.477

 この原稿を書いている今日は,東日本大震災からちょうど1か月.日本中の多くの人がそうだっただろうと思うが,私も震災以来,ニュースに釘付けの日々が続き,寝ても覚めても被災地のことと福島第一原子力発電所の事故のことが頭から離れなかった.

 それが,数日前,ようやくハッとわれに帰った.そのきっかけは,桜とスミレである.自宅の近くにある公園で桜が開花し,スミレがその根元で遠慮がちに咲いているのが目にとまったとき,突然,今自分が生きている季節の感覚が押し寄せてきたのだ.震災と原発で頭がいっぱいになっている間に,いつのまにか季節はめぐり,冬から春になっていた.

保健活動のtry! 学会で発表しよう 論文を執筆しよう・3

文献検索

著者: 中村好一

ページ範囲:P.479 - P.482

そもそもは…

 本連載を始めてから「しまった!」と感じていることがある.学会発表や論文執筆はそれの前提となる研究が存在する.そして,「研究が完成したので,それでは学会で発表して,論文執筆も考えようか」というのではなく,研究を始める時から研究の最終段階である学会発表や論文執筆を常に念頭に置いておかなければならないのである.したがって,本連載は研究を進めていく上での最終段階である学会発表/論文執筆だけを取り上げているので,結構無理がある.

 今回のテーマである「文献検索」も,いざ,学会発表/論文執筆の段階になって行うことでは,決してない.研究とはそもそも,「現段階では分からないことを明らかにする」行為であり,既に明らかなことを改めて明らかにすることに意味はない1,2).たとえ2番煎じを行うにしても,2番煎じであることを充分に認識した上で行うべきである3).現状を把握するためには文献検索がもっともオーソドックスな方法であるが,研究が完了してから行うことではない.とはいえ,研究を進めるに当たってはどこかで行わなくてはならない行為であり4),今回取り上げることとした.無理矢理こじつけるとすれば,研究を開始する前に文献検索を充分に行って計画を作成したが,研究が完成して学会発表や論文執筆の際に,この間に新たに別の人がこの分野で新しいことを報告していないかどうかを確認する,ということだろうか.

地域づくりのためのメンタルヘルス講座・3

「ひきこもり」はどれくらいいるのですか? 背景にあるメンタルヘルスの問題と支援上の注意事項を教えて下さい

著者: 近藤直司

ページ範囲:P.483 - P.485

「ひきこもり」の定義と疫学

 2010年5月に公表された厚生労働省『ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン』1)において,「ひきこもり」は「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である」と定義され,「なお,ひきこもりは原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とするが,実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべきである」という但し書きが付記されている.

 ひきこもりケースに関する疫学データとして,上記のガイドラインにおいては,「約26万世帯に,20歳以上,49歳以下で現在ひきこもり状態の人がいる」という推計値2)を採用している.内閣府による調査では,15歳以上39歳以下の人口のうち,「ふだんは家にいるが,近所のコンビニなどには出かける」という「狭義のひきこもり」が23.6万人,「ふだんは家にいるが,自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」という「広義のひきこもり」が約69.6万人という推計値を示している.これらの結果から,緊急に本格的な支援を必要としているのは20~30万人であると考えられる.

保健所のお仕事─健康危機管理事件簿・15

集団胃腸炎への対応(平成10年度)その1

著者: 荒田吉彦

ページ範囲:P.486 - P.489

 月刊誌の宿命ですが,タイムラグがあります.この稿を書いているのは3月下旬ですが,掲載されるのは6月号です.

 ご存知の通り,この3月11日に,国のあり方を根本から見直さなければならない規模の大災害が日本を襲いました.この時,私は北海道保健所長会理事会で,新たな医療再生計画の進め方に関する説明をしていました.地震の少ない札幌にしては珍しく,大きく長い揺れが続きました.揺れが収まると直ちに,かつての同僚である保健所長たちは,携帯電話で地震情報を確認し,「津波が来るかもしれない」と職場と連絡をとり始めました.保健所を離れて1年を経過し,大きな組織の中で勤務することに慣れてきた私にとって,その姿はとても頼もしく映りました.

リレー連載・列島ランナー・27

既存統計は地域における自殺対策に活かせるか?

著者: 藤井充

ページ範囲:P.490 - P.493

はじめに

 昨年5月,地縁,血縁のない山梨県の保健所に勤務することになった新米所長です.働き始めて3か月までは,「なんせ新米で勉強中ですから」と言い訳ができましたが,半年を過ぎるとそれも難しくなり,今では内心冷や冷やしながら,大きな問題のほうから避けてくれることを念じつつ過ごしている今日この頃です.

 本稿では,地域において自殺対策を行うのに実態が分からず何ができるかという思いから始めた,既存資料の収集・集計の過程で感じたことを紹介したいと思います.これから地域レベルで自殺対策を考える方の参考になれば幸甚です.

衛生行政キーワード・76

ヒト白血病ウイルス-1型(HTLV-1)の母子感染予防対策について

著者: 森岡久尚

ページ範囲:P.494 - P.496

はじめに

 平成22年10月,厚生労働省は,官邸に設置されたHTLV-1特命チームの決定に基づき,妊婦健康診査で実施する標準的な検査項目にHTLV-1抗体検査を追加するとともに,公費負担を実施することとした.これにより,わが国のほぼすべての妊婦がHTLV-1抗体検査を受けることとなり,抗体陽性の妊婦から生まれた児の授乳制限等のHTLV-1母子感染予防対策を全国的に実施することとなった.本稿では,この経緯等について説明する.

世界の健康被害・6

守るべきもの

著者: 鎌仲ひとみ

ページ範囲:P.498 - P.499

放射性物質拡散

 3月11日に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故以来,いったいどれだけの放射性物質が放出され,どのように拡散していったのか.その正確な数字は不確定のまま,事態は今も進行している(4月20日現在).事故が発生して1か月も経って,チェルノブイリと同じ「レベル7」の事故であるとIAEAによって認定された.しかも3月11日の時点で大量の放射性物質が出ていたこともわかっていたのに,それは隠されていた.

 福島原発が放出した放射性物質の量はチェルノブイリの量の1割とされているが,チェルノブイリの事故当時に放射能が拡散した地域に比べて,今回の事故では格段に人口密度が高い地域に放射性物質が飛散したことは重大な違いだ.3月11日以来放出された放射性ヨウ素131は37~63万ベクレル(Bq)と言われ,現在も放出は続いている.

フォーラム

ヘルスプロモーション活動における病院が担うべき役割―Health promoting hospitals and services(HPH)

著者: 舟越光彦

ページ範囲:P.500 - P.502

 欧州を中心に,ヘルスプロモーション活動を積極的に実践する病院が増えている.こうしたヘルスプロモーション活動をすすめる病院は“Health promoting hospitals and services”(以下,HPHと略す)1)と呼ばれ,国際的なネットワークを広げている.わが国では,2008年に千鳥橋病院(当院)が初めてHPHの国際ネットワークに加入した.

 わが国においても,多くの病院がヘルスプロモーション活動を積極的に実践すれば,公衆衛生上も有益な貢献になると考えられる.そこで,本稿ではHPHの概念等と当院のヘルスプロモーション活動の経験について紹介する.また,2010年に英国で開催されたHPHの国際カンファレンスに参加し,ヘルスプロモーション活動における今日的な病院の役割について学んだので,その内容についても紹介する.

お知らせ

第32回保健活動研修会 フリーアクセス

ページ範囲:P.459 - P.459

日時:平成23年8月24日(水)~8月26日(金)

開催場所:自治医科大学地域医療情報研修センター(自治医科大学構内施設)

 〠329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-160

沈思黙考

津波

著者: 林謙治

ページ範囲:P.464 - P.464

 今回はさる3月18日ソウルで開催されたWHOの生活習慣病対策会議における討論内容を紹介する予定でしたが,3月11日に東日本大震災が発生したために出張どころではなくなった.国立保健科学院から厚労省の対策本部に複数名のスタッフを派遣し,被災地には保健師が救済業務にあたっている.そのほか院内では特に放射線と水道関係のスタッフが専門的な業務を請け負っている.

 三陸津波地震は1856(安政3)年以来,1896(明治29)年,1933(昭和8)年と今回で4回目である.リアス式海岸であるための地形の不規則性に波のエネルギーは増幅されやすいと言われている.第一波は障害物である最初の陸地にぶつかり,波が遅くなったところに第二波が早い速度で折り重なるようにして破壊力を増していくらしい.

列島情報

医療連携パスコーディネーター養成講座

著者: 日置敦巳

ページ範囲:P.470 - P.470

 県の生活習慣病医療連携推進事業の一環として,二次医療圏である岐阜地域においても医療連携パスコーディネーター養成講座が開催された.

 当地域の人口は約80万人で,域内には一般病床400床以上の病院(国・県・市・民間)5施設を含む40の病院が存在する.現在,これら病院や診療所等のスタッフが加わった「岐阜地域医師会連携パス機構」が中心となって,疾患別に20の連携パスが運用されている.しかしながら,医療関係者の間でもまだ浸透が不十分であり,一方で運用に当たっては医師等への負担軽減が課題となっている.こうした中,県がパス機構の中心的役割を果たしている岐阜市医師会に医療連携推進のための事業を委託することとなり,その一つとして養成講座が開催された.

映画の時間

―女は,国を救うために己を捨てた―男は,女を守るために刀を取った―ゲキ×シネ「薔薇とサムライ」

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.489 - P.489

 暗いニュースが続き,電力不足で世の中が実際に暗くなっていますが,今月はそんな日本を元気にするような,明るく楽しい「薔薇とサムライ」をご紹介しましょう.

 舞台は17世紀のヨーロッパの小国コルドニア.主人公アンヌ・ザ・トルネード(天海祐希)は地中海を駆け抜ける女海賊.他の海賊しか襲わない,いわば正義の海賊です.その女海賊の用心棒をしているのが,遥か東方の島国ジパングからやってきた石川五右衛門(古田新太)です.

読者の声

災害時の口腔ケアのサイト作成

著者: 鈴木俊夫

ページ範囲:P.496 - P.496

 各地で口腔ケアに取り組まれて久しいが,現状を見るとまだまだ十分だとは言えません.まして,今回の大災害のようにライフラインが途絶されてしまった場合には,口腔ケアそのものは後回しにされてしまいます.

 そこで,震災直後の口腔ケアについて,被災地で水もなく,雪がふる寒い地域でどのように行ったらよいか,サイトを作成しましたので表で紹介します(平成23年4月17日現在).

予防と臨床のはざまで

企業の東日本大震災対応

著者: 福田洋

ページ範囲:P.497 - P.497

 東日本大震災については,連日の報道の通り未だ余断を許さない状況が続き,被災の有無にかかわらず,企業活動にとっても最も関心が高く,かつ特別な対応が必要な状況になっています.各企業が知恵を出し合って従業員の安全と健康に資する様々な情報共有を行いたいところですが,未曾有の大災害で明確な指針もなく,各企業では手探りで工夫をしながら各々対応を進めていると思います.

 多職種産業保健スタッフの会「さんぽ会」でも,3月月例会は東日本大震災の対応や計画停電のため中止としていました.月例会をどう再開しようか思案した結果,4月21日の月例会で当初予定してした「ディジーズマネジメント」に加えて,緊急テーマ「企業の東日本大震災対応」を扱うことになりました.被災状況や企業の規模などにより事情は異なり,“これが正しい”という答えもありません.このタイミングでは現状が共有され,色々なアイデアが出されること,議論が始まることが重要であり,現場スタッフの研究会として口火を切るべきと考えました.

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投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.503 - P.503

あとがき・次号予告 フリーアクセス

著者: 品川靖子

ページ範囲:P.504 - P.504

 私がいた頃の保健所は,対物保健部門と対人保健部門から組織され,対物保健としては食品・獣医衛生,環境衛生,薬事衛生がありました.対人保健部門に所属している保健師さんが子育て中のお母さんからアタマジラミの相談を受けて,環境衛生監視員の方と一緒に対応するなど,両部門間でそれなりに交流があったものです.

 ところが,地域保健法の改正により,保健所の組織や機能は大きく様変わりしました.その結果,保健センター等に配属されるようになった方々にとっては,対物保健とりわけ“環境衛生”は,なじみの薄い分野になってしまったかもしれません.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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