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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生75巻6号

2011年06月発行

文献概要

連載 地域づくりのためのメンタルヘルス講座・3

「ひきこもり」はどれくらいいるのですか? 背景にあるメンタルヘルスの問題と支援上の注意事項を教えて下さい

著者: 近藤直司1

所属機関: 1山梨県都留児童相談所

ページ範囲:P.483 - P.485

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「ひきこもり」の定義と疫学

 2010年5月に公表された厚生労働省『ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン』1)において,「ひきこもり」は「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である」と定義され,「なお,ひきこもりは原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とするが,実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべきである」という但し書きが付記されている.

 ひきこもりケースに関する疫学データとして,上記のガイドラインにおいては,「約26万世帯に,20歳以上,49歳以下で現在ひきこもり状態の人がいる」という推計値2)を採用している.内閣府による調査では,15歳以上39歳以下の人口のうち,「ふだんは家にいるが,近所のコンビニなどには出かける」という「狭義のひきこもり」が23.6万人,「ふだんは家にいるが,自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」という「広義のひきこもり」が約69.6万人という推計値を示している.これらの結果から,緊急に本格的な支援を必要としているのは20~30万人であると考えられる.

参考文献

1) 厚生労働省:ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン.2010 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000006i6f.html
2) Asuka Koyama, Yuko Miyake, Norito Kawakami, et al:Lifetime prevalence, psychiatric comorbidity and demographic correlates of "hikikomori" in a community population in Japan. Psychiatry Research 176:69-74, 2010
3) 近藤直司,清田吉和,北端裕司,他:思春期ひきこもりにおける精神医学的障害の実態把握に関する研究.厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業「思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究(主任研究者/齊藤万比古)」,平成22年度総括・分担研究報告書,2010
4) 近藤直司,榊原 聡:精神保健福祉センターで実施しているグループ支援の実際とひきこもりケースに対する有効性に関する研究.厚生労働科学研究「思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・支援システムの構築に関する研究」(主任研究者/齊藤万比古),平成20年度研究報告書,2010
5) 日本生産性本部,若者自立中央センター:平成22年度地域若者サポートステーション事業.発達障害ワーキンググループ報告書,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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