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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生75巻7号

2011年07月発行

文献概要

特集 健康危機兆候のモニタリング

環境汚染のモニタリングと要因解析―樹氷等の分析から

著者: 柳澤文孝12

所属機関: 1(国)山形大学理学部地球環境学科 2中華人民共和国 成都理工大学

ページ範囲:P.525 - P.528

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はじめに

 日本全国で酸性雨が降り,春季には光化学スモッグが観測されることから,アジア大陸から長距離輸送される大気汚染の影響が懸念される.硫黄同位体は,降水やエアロゾルなどに含まれている汚染物質の起源を特定するトレーサーとして有効である1,2)

 硫黄同位体を測定するには,降水の場合は濾過し,エアロゾル(大気中に浮遊している粒径10nmから1mmの液体あるいは固体の粒子)の場合は水溶性成分を抽出する.濾液および抽出液に10%BaCl2溶液を添加してBaSO4を沈殿させる.BaSO4を10倍量のV2O5とSiO2と混合して真空中で加熱し,生成したSO2ガスで硫黄同位体比を測定する3).硫黄同位体比(δ34S)は32Sに対する34Sの存在比率を,標準物質であるCDT(Canyon Diablo Troilite)に対する千分偏差(‰:パーミル)の形で表す.

参考文献

1) 赤田尚史,他:日本の湿性降下物に含まれる非海塩性硫酸イオンの硫黄同位体比.雪氷64:173-184, 2002
2) 本山玲美,他:山形のエアロゾルと湿性降下物に含まれる非海塩性硫酸イオンの硫黄同位体比.雪氷62:215-224, 2000
3) Yanagisawa F, Sakai H:Thermal decomposition of barium sulfate-vanadium pentoxide-silica glass mixtures for preparation of sulfur dioxide in sulfur isotope ratio measurements. Anal Chem 55:985-987, 1983
4) 赤田尚史・柳澤文孝:全降下物およびエアロゾルに含まれる非海塩性硫酸イオンのイオウ同位体比.エアロゾル研究17(4):247-251, 2002
5) 丸山隆雄,他:中国および日本で使用される石炭と石油の硫黄同位体比.pp45-51,日本化学会誌,2000
6) 本山玲美,他:東アジアで使用されている石炭に含まれる硫黄の同位体比.雪氷64:49-58, 2002
7) 佐藤元哉,他:山形県鶴岡市でハイボリュームエアサンプラーを用いて採取しているエアロゾルの化学組成と硫黄同位体組成の経年変化.第17回(社)大気環境学会 北海道東北支部学術集会,2010
8) 阿部正二朗:蔵王の樹氷の全て.pp81-98,東北出版企画,1979
9) 赤田尚史,他:山形蔵王で採取した着氷に含まれる硫酸イオンの硫黄同位体比.雪氷68:105-112, 2008
10) 阿部修,柳澤文孝:2009年2月3日山形県大蔵村で観測された雪面汚染現象.雪氷72:35-43, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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