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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生75巻8号

2011年08月発行

文献概要

特集 高齢者の事故

高齢者の窒息・誤嚥

著者: 向井美惠1

所属機関: 1昭和大学歯学部口腔衛生学教室

ページ範囲:P.600 - P.606

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はじめに

 高齢者の不慮の事故による死亡者数において,窒息事故の占める割合は多く,平成18年に交通事故死を上回り,その後も両原因の差が広がりつつあるのが現状である(図1).また,死亡総数に対する高齢者の占める割合は多い(表1).

 窒息事故の中でも摂食中に窒息事故で死亡する人は,年間4千人を超えており,高齢者が占める割合が高い1).誤嚥・窒息事故の多くは,日常の食事やおやつを食べながら引き起こされており,多くは食物が粉砕されないままに誤嚥されて窒息事故が起こっている.高齢者に限らず,窒息のリスクを軽減するためには「食物の物性を考慮してどのように食べたら安全か」,個々の機能レベルに合わせた安全性が担保された食べ方,噛み方,のみ込み方の指導支援が必要である.また,摂食・嚥下機能障害がある場合には,摂食・嚥下リハビリテーションの治療・訓練や,機能程度に合わせた食べ方の指導が不可欠となる.

 窒息に関わる要因は,ヒト側の要因と食品側の要因があるが,これらが複合的に関与して窒息が引き起こされることから,特に高齢者の窒息事故の効果的な予防法やリスクを減らす食べ方などについては,食品の要因以外にも,加齢に伴う窒息の場である咽頭・喉頭の解剖学・生理学的な変化に加えて,高齢者の生活環境などの社会的側面の考慮が必要である.

参考文献

1) 厚生統計協会:国民衛生の動向2010/2011
2) 厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hwjinkou/suii/06/deth18.html#top
3) 厚生労働省:人口動態統計
4) 第1回食品安全委員会 食品による窒息事故に関するワーキンググループ http://www.fsc.go.jp/senmon/sonota/chi_wg-dail/index.html
5) 菊谷 武,他:食品による窒息事故の現状把握②介護老人福祉施設における窒息事故とその要因.平成20年度厚生労働科学特別研究事業 食品による窒息の要因分析(主任研究者/向井美惠),2008
6) 須田牧夫,菊谷 武,他:在宅要介護高齢者の窒息事故と関連要因に関する研究.老年歯学23(1):3-11,2008
7) 川崎孝広,石川雅健,曽我幸弘,他:気道異物による窒息症例への対応.日救急医関東誌20(2):172-173,1999
8) 弘中祥司,石川健太郎,山中麻美:ヒト側の要因分析②CT画像を用いた中咽頭の形態的特長の評価.平成20年度厚生労働科学特別研究事業 食品による窒息の要因分析―ヒト側の要因と食品のリスク度(主任研究者/向井美惠),2009
9) 石川健太郎,向井美惠,他:CT画像を用いた中咽頭の形態的特徴の評価.第14回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会,平成20年9月13~14日(千葉)
10) 堀口逸子,市川光太郎:食品による窒息事故の現状把握に関する研究.平成19年度厚生労働科学特別研究事業 食品による窒息の現状把握と原因分析(主任研究者/向井美惠),2008
11) 大越ひろ,河村綾乃:原因食品の分析①餅の物性に及ぼす温度の影響.平成19年度厚生労働科学特別研究事業 食品による窒息の現状把握と原因分析―ヒト側の要因と食品のリスク度(主任研究者/向井美惠),2008
12) 大越ひろ:原因食品の分析に関する研究①原因食品の物性分析 ご飯・パンの物性の解析.平成20年度厚生労働科学特別研究事業 食品による窒息の要因分析(主任研究者/向井美惠),2009
13) Samuels R, Chadwick DD:Predictors of asphyxiation risk in adults with intellectual disabilities and dysphagia. JIDR 50(5):362-370, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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