公衆衛生75巻8号

2011年08月発行

特集 高齢者の事故

高齢者の熱傷

著者： 春成伸之¹ 飯田美奈子² 平野真美²

所属機関： ¹横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター ²横浜市立大学附属市民総合医療センター看護部熱傷病棟

ページ範囲：P.607 - P.610

はじめに

　高齢化社会の到来は，将来の医療を考える上で，最大の懸案事項である．どの疾患においても，高齢者であることは，予後不良を予測する最大因子と考えられる．

　われわれは日々，熱傷診療に従事しているが，高齢者熱傷については，年齢に大きく依存する生命予後，治療対効果の悪さ，絶望的な社会復帰という大きな壁に直面している．今後高齢化が進むにつれ，高齢者熱傷患者が多くなることは必然的であり，加齢に挑戦するような現状の治療戦略では，突破口は見い出せない．そこでわれわれは発想を転換し，高齢者から熱傷を予防しようと考え，施設の近辺で高齢者熱傷の予防活動を展開している．

　本稿では，高齢者熱傷の原因，特徴，治療の問題点，予後について概説し，高齢者熱傷予防の可能性について述べる．さらに，われわれが行っている高齢者熱傷の予防活動について，ここに報告する．

参考文献

1) 東京都熱傷救急連絡会：東京都における熱傷の動向．　http://www.tbua.jp/doukou.htm

2) 菅又章：小児・高齢者熱傷．救急医学34(4):481-484, 2010

3) American Burn Association National Burn Repository Advisory Committee:National Burn Repository 2009 Report Dataset Version 5.0. American Burn Association, 2010　http://www.ameriburn.org/2009NBRAnnualReport.pdf

4) American Burn Association:Educational Resource Center　http://www.ameriburn.org/preventionEdRes.php