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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生75巻8号

2011年08月発行

文献概要

特集 高齢者の事故

高齢者の交通事故

著者: 玉城英彦1

所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科予防医学講座国際保健医学分野

ページ範囲:P.611 - P.617

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はじめに

 世界でも高い高齢化率を誇るわが国では,経済,産業の発展とともに,私たちが生活する居住環境も大きく変容してきた.都市部では交通網が発達する一方,市町村道など道路実延長は年々増加し(120万4千km,2008年)1),旅客輸送量(人の運送に関わる営業用または自家用の乗用車およびバスの輸送活動)の車種別では,輸送人員の88%を乗用車および軽自動車が占め,特に自家用軽自動車による輸送人員が増加傾向にある2).また,内閣府の調査3)によると,高齢者の外出の主な移動手段について,1999年には「バス・電車」が「自動車等自ら運転するもの」よりも高い割合であったが,2009年にはその割合が逆転した.こうした劇的な生活環境の変化は,近年,高齢者における交通事故が増加傾向にある状況と無関係ではないであろう.

 本稿では,高齢者の交通事故の特徴と現在取り組まれている対策を踏まえ,交通事故防止への道筋について述べたい.

参考文献

1) 総務省統計局:第六十回 日本統計年鑑 平成23年,2011
2) 国土交通省:平成21年度分自動車輸送統計年報,2010
3) 内閣府:平成21年度 高齢者の日常生活に関する意識調査,2009
4) 警察庁交通局:平成22年中の交通事故の発生状況,2011
5) 厚生労働省:平成21年(2009)人口動態統計年報,2010
6) 厚生労働省:平成21年簡易生命表 参考資料3死因別死亡確率と特定死因を除去した場合の平均余命の延びの推移,2010
7) 財団法人交通事故総合分析センター:夜間の高齢歩行者の死亡事故.イタルダ・インフォメーション87,2011
8) 財団法人交通事故総合分析センター:高齢者の四輪運転中の事故―その推移と特徴.イタルダ・インフォメーション68:10-11,2007
9) 三村 將:高齢者の運転能力評価.老年精神医学雑誌16:792-801,2005
10) 科学警察研究所交通科学第二研究室:高齢運転者の特性に関する研究 http://www.npa.go.jp/nrips/jp/traffic/section2.html[2011/5/27]
11) Anstey KJ, et al:Cognitive, sensory and physical factors enabling driving safety in older adults. Clin Psychol Rev 25:45-65, 2005
12) Dawson JD, et al:Neuropsychological predictors of driving errors in older adults. J Am Geriatr Soc 58:1090-1096, 2010
13) 内閣府:平成23年交通安全白書,2011
14) 警察庁:平成22年警察白書,2010
15) 荒井由美子,他:認知症高齢者の自動車運転を考える家族介護者のための支援マニュアル.平成19-21年度厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業「認知症高齢者の自動車運転に対する社会支援のあり方に関する検討」(H19-認知症-一般-025)研究班 http://www.ncgg.go.jp/department/dgp/index-dgp-j.htm[2011/5/27]
16) 北海道環境生活部くらし安全推進課交通安全対策グループ:交通安全運動の取り組み―シルバーアドバイザーの店 http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/kas/kat/contents/koureisha.htm[2011/5/27]
17) 玉城英彦:社会が病気をつくる―「持続可能な未来」のために.角川学芸出版,2010
18) 警察庁:第9次交通安全基本計画,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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