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連載 世界の健康被害・8
原子力プロパガンダ
著者: 鎌仲ひとみ12
所属機関: 1多摩美術大学 2国際基督教大学
ページ範囲:P.650 - P.651
文献購入ページに移動1942年,シカゴ大学の研究室で世界で初めてプルトニウムが抽出された.ウランやプルトニウムが核分裂反応を連鎖的に繰り返すことで,膨大なエネルギーが放出されるということが解ってきた.原子力というパンドラの箱が開けられた瞬間だ.この核エネルギーを何に利用するのか? 真っ先に考えられたのが,兵器利用だった.ドイツのナチズムが核兵器を開発しているという情報があり,アメリカもまた,それに対抗してドイツよりも先に核兵器を開発しようと,マンハッタン・プロジェクトは始まった.
濃縮ウランを使った広島型原爆,プルトニウムを使った長崎型原爆が二発,合計三発の核兵器が完成するまでに,莫大な国家予算がつぎ込まれた.大統領ですら,いったいどれだけの費用が使われたのか知らされていなかった.まず,プルトニウムを大量に生産するために人知れず,広大な敷地を確保しなければならなかった.ウランを濃縮する技術はまったくゼロから始めなければならなかった.ウラン濃縮の後にウランを核分裂させて,初めて,プルトニウムができる.それは原子炉の中で行われなければならなかった.
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