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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生76巻11号

2012年11月発行

文献概要

特集 スクリーニング―その進化と課題

尿マーカーによる骨粗鬆症検診の課題と展望

著者: 新飯田俊平1

所属機関: 1(独)国立長寿医療研究センター遺伝子蛋白質解析室

ページ範囲:P.866 - P.870

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はじめに

 「この10年,毎年検診を受けて問題ないと言われてきましたが,尿マーカーの検査で要精査となり,病院で骨粗鬆症を見つけてもらい,治療を開始することになりました」.

 尿マーカーによる骨粗鬆症のスクリーニング調査を実施してから,しばしばこういう手紙や電話がくる.通常骨粗鬆症の行政検診では,前腕の骨か踵の骨密度を測定する.その感度は非常によいということになっている1).この場合の感度とは,骨粗鬆症の診断基準となる腰椎または大腿骨の骨密度を反映するという意味である.ところが今回の調査から,骨密度測定はかなりの有病者を見逃していることがわかった.だから冒頭のような手紙や電話がくる.感度のよい検査法は見逃しが少ないということになっている.骨密度測定法の感度がよいというのがそもそも間違いなのか,使用した測定機器に問題があったのか,それはわからない.

 骨代謝マーカーはスクリーニングには不向きである2).そういう意見がある.通常骨代謝マーカーは治療のモニターなど,臨床上の使用が主で3),行政検診ではほとんど利用されていない.ところが,実際に検診で使ってみたら,骨密度測定のときより二次検診後の有病者スクリーニング数が多かった.この傾向は3年の調査期間を通して変わらなかった.一次スクリーニングが有病者を見逃していては検診の意味がない.それなら尿マーカーを検診で使ってみてもいいのではないか.個人的にはそう思っている.尿マーカーの検診への適応性の議論は専門家に任せるとして,本稿では,今回の調査で見えてきた課題について考えてみた.

参考文献

1) Fujiwara S, et al.:Heel bone ultrasound predicts non-spine fracture in Japanese men and women. Osteoporos Int 16:2107-2112, 2005
2) 藤原佐枝子:骨代謝マーカーによる骨粗鬆症検診の実態と問題点.実践骨代謝マーカー(編):福永仁夫.pp215-218,メディカルレビュー社,2003
3) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版.ライフサイエンス出版,2011
4) Orimo H, et al.:Hip fracture incidence in Japan;estimates of new patients in 2007 and 20-year trends. Arch Osteoporos 4:71-77, 2009
5) 原田敦,他:骨粗鬆症の医療経済学―疫学,費用と介入別費用・効用分析.日老医誌42:596-608, 2005
6) Kanis JA, et al.:Treatment of established osteoporosis;a systematic review and cost-utility analysis. Health Technology Assessment 6:1-146, 2002
7) Stevenson M, et al.:A systematic review and economic evaluation of alendronate, etidronate, risedronate, raloxifene and teriparatide for the prevention and treatment of postmenopausal osteoporosis. Health Technol Assess 9:1-160, 2005
8) Jaglal SB, et al.:Population trends in BMD testing, treatment, and hip and wrist fracture rates;are the hip fracture projections wrong?. J Bone Miner Res 20:898-905, 2005
9) Kannus P, et al.:Natiowide decline in incidence of hip fracture. J Bone Miner Res 21:1836-1838, 2006
10) Sehgal A, et al.:A victory in the war on osteoporosis? Declining prevalence of hospitalization for non-traumatic hip fractures in US. Ann Rheum Dis 67(suppl Ⅱ):55, 2008
11) 新飯田俊平:尿マーカーを用いた骨粗鬆症のスクリーニング.運動器疾患の予防と治療.長寿科学振興財団,2011
12) 厚生労働省:がん検診受検率50% http://www.gankenshin50.go.jp/campaign/outline/low.html
13) がん検診企業アクション事務局:がん検診に関する意識調査. www.gankenshin50.go.jp/pdf/research_100324.pdf
14) Asaba Y, et al.:Urinary γ-glutamyltransferase(GGT)as a potential marker of bone resorption. Bone 39:1276-1282, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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