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特集 スクリーニング―その進化と課題
結核感染のスクリーニングの進化と課題
著者: 森亨1
所属機関: 1公益財団法人結核予防会結核研究所
ページ範囲:P.880 - P.884
文献購入ページに移動低まん延期の結核対策の中で重要な方策は,確実な治療と化学予防である.前者はDOTS(Directly Observed Treatment, Short-course)という総合的な患者支援戦略として具体化され,後者は「潜在性結核感染症の治療」という新しいコンセプトのもとにその強化が改めて求められている.そのために結核感染を受けた人を「ふるいわけ」することは,対策上重大な意味のあることである.これにはもっぱらツベルクリン反応(以下「ツ反」)検査が用いられてきた.しかしこの検査は,BCG接種を実施してきた日本をはじめ多くの国では,BCGによる非特異的反応のためにその有用性はかなり限定されている.これはツ反に用いる抗原(PPD)が結核菌由来の蛋白とはいえ,成分の大半がBCG(菌)にも共通するものだからである.このツ反検査の低い特異性の問題を克服したのが,インターフェロンガンマ遊離アッセー(Interferon-gamma release assay:以下IGRA)である.これは結核菌特異的な蛋白(実際はペプチド)を用いて感作リンパ球から放出されるサイトカイン(インターフェロンγ)を定量する,あるいはインターフェロンγを放出する細胞を計数する技術で,それぞれクォンティフェロン・ゴールド®(国際的にはQuantiFERON-TB® Gold In-Tubeと呼ばれる.前身はQuntiFERON-TB® Goldで,日本ではクォンティフェロンTB第二世代と呼ばれていた.このため現行のものを第3世代と呼ぶことがある.以下両者の区別を要しない場合にはQFTと記す),T-SPOT®.
2005年に承認されて以来,日本ではQFTは接触者健診を中心に利用が拡大していき,図1aに見るように,最近では,保健所の行う接触者健診でのツ反検査はQFTに置き換えられた感がある(わずかに残っているツ反検査は乳幼児の分であろう).それだけにその精度や有用性に関しては重大な責任がある.以下この観点から,QFT検査法について論じたい.
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