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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生76巻12号

2012年12月発行

文献概要

特集 原子力災害と公衆衛生

原子力災害を公衆衛生はどう受け止めるべきか

著者: 岸(金堂)玲子1

所属機関: 1北海道大学環境健康科学研究教育センター

ページ範囲:P.928 - P.932

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災害勃発から2012年9月原子力規制庁発足まで

 東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故は,重大な放射能汚染を引き起こした.住み慣れた土地を追われ,高線量汚染地域を中心に多くの市民は未だ不自由な避難生活を送っている.一部では避難が解除されたものの,今後も場所によっては数十年余に亘る避難生活であろう.比較的低線量地域でも汚染地に留まった子どもたちとその家族も,不安に苛まれ外遊びも自由にできない生活を強いられている.

 災害発生直後には,飲料水,魚,茶,牛肉と次々に食の放射能汚染が報道される中で,市民からは外部被ばくのみならず,内部被ばくを含めて放射線の健康影響の「不確かさ」への不安は特に大きかった.東京電力(以下,東電)や政府,原子力安全・保安院や内閣府原子力安全委員会などの対応には不満や怒りの声が出された.科学者の発する意見や助言の中立性に対しても疑義が高かった.筆者は本誌で昨年度は2回にわたり原発事故による放射線被ばくと健康・安全に関わる科学的な論点,および専門家,学協会や日本学術会議などの役割について述べてきた1,2)

参考文献

1) 岸(金堂)玲子:原発事故による放射線災害から学ぶこと―健康リスクに関する現状の論点整理と科学者・専門家の役割・1―福島原発事故による放射線被ばく影響に関する学術的な論点について.公衆衛生75(11):867-872,2011
2) 岸(金堂)玲子:原発事故による放射線災害から学ぶこと―健康リスクに関する現状の論点整理と科学者・専門家の役割・2―科学者・専門家の役割について.公衆衛生75(12):867-872,2011
3) 吉田文和:最大・最悪の公害としての原発災害『脱原発時代の北海道』.北海道新聞社,2012
4) 菅谷昭:原子力災害における放射線被ばくの長期的課題―チェルノブイリ事故医療支援の経験を通して.公衆衛生76(6):462-468,2012
5) 日本学術会議:東日本大震災復興支援委員会放射能対策分科会 提言「放射能対策の新たな一歩を踏み出すために―事実の科学的探索に基づく行動を」.2012年4月9日
6) 日本弁護士会(編):検証・原発労働.岩波書店ブックレット,2012
7) 日本産業衛生学会・許容濃度等委員会:電離放射線(リスク評価値).2012年5月
8) 日本学術会議 答申「高レベル放射性廃棄物の処分について」.2012年9月

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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