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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生76巻12号

2012年12月発行

文献概要

特集 原子力災害と公衆衛生

わが国の原子力施設の現状とシビアアクシデント

著者: 小澤守1

所属機関: 1関西大学社会安全学部

ページ範囲:P.933 - P.939

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はじめに

 2011年3月11日に勃発した東日本太平洋沖地震ならびに巨大津波は東北から関東の太平洋側を襲い,2万人近い犠牲者を出すとともに,海岸に立地する原子力発電所や火力発電所あるいは石油関連プラントなどの社会インフラに甚大な被害を与えた.なかでも東京電力福島第一原子力発電所(以下,福島第一原発)は地震による鉄塔倒壊などから外部系統電源を喪失し,さらに津波により非常用ディーゼル発電機,配電盤が冠水していわゆるStation Black Out(以下SBO:全電源喪失)状態となり,海水冷却システムなどが損傷・機能喪失したため冷却不能状態に追いこまれた.その結果,1号機,3号機,4号機で水素爆発,1~3号機では炉心が溶融し,大量の放射性物質が周囲に拡散した.これによってわが国始まって以来の,10万人を超える地域住民が避難を余儀なくされた.事故後,政府,国会,民間の各事故調査委員会が立ち上がり,また当事者である東京電力による事故調査報告も公表された.全燃料が燃料プールに移設されていた4号機の状況はかなり明らかになり,また試験的に燃料棒の取り出しも行われたが,残る1~3号機にはいまなお十分な調査もままならない状況にあり,事故の正確な進展や被害の状況も詳(つまび)らかではない.

 本稿ではまず,わが国における原子力開発と関連施設の状況,さらには開発の課程で行われてきた安全研究の状況などについて述べ,さらに事故について説明して問題点など指摘しておきたい.

参考文献

1) World Nuclear Association:WNA Reactor Database
2) 東京電力:福島第一原子力発電所 設備の概要(2011)
3) 日本原子力技術協会資料
4) 成合英樹:福島第1原子力発電所事故について.Radioisotopes 61(4):193-207, 2012
5) 原子力災害対策本部:原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書―東京電力原子力発電所の事故について.2011
6) 東京電力:福島原子力事故調査報告書.中間報告(2011.12),最終報告(2012.6)
7) 東京電力福島原子力発電所事故調査・検証委員会:中間報告(2011.12),最終報告(2012.7)
8) 東京電力:福島第一原子力発電所―東北地方太平洋沖地震に伴う原子炉施設への影響について.2012.5.
9) 有冨正憲(編著):今,原子力研究者技術者ができること.pp15-16,培風館,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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