icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生76巻12号

2012年12月発行

文献概要

連載 災害を支える公衆衛生ネットワーク~東日本大震災からの復旧,復興に学ぶ・9

こころのケアとは―ポピュレーションアプローチの視点から

著者: 佐々木亮平1 岩室紳也2

所属機関: 1日本赤十字秋田看護大学看護学部看護学科 2公益社団法人地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター

ページ範囲:P.983 - P.988

文献購入ページに移動
被災地の実情に学ぶこころのケア―被災県での自殺の状況

 東日本大震災前後で比較すると,人口比では岩手県,宮城県では明らかに自殺は減少しているが,福島県ではほぼ横ばいになっている(図1)1).この違いを軽々と評価,考察することはできないが,どの被災地でもハイリスク者へのアプローチ(ハイリスクアプローチ2))は専門職によって丁寧に行われていたのに対して,被災地に蔓延するリスクへのアプローチ(ポピュレーションアプローチ2))は差が大きかったのではないかと考えられる.すなわち,岩手県と宮城県では結果的に同じ被災状況にある人たちが互いの存在を避難所等で語らずとも知り合い,被災で各々が抱えたストレス(リスク)と向き合うことができる環境が生まれていたのとは対照的に,福島県では原発事故のため避難がコミュニティ単位ではないばかりか,福島県内外への分散を余儀なくさせられ,最初から同じような境遇の被災者がいない状況に置かれてしまい,結果として各々のストレスを克服するための環境に差が生じたのではないだろうか.

参考文献

1) http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/suisin/k_15/pdf/s2.pdf
2) 公益社団法人地域医療振興協会ヘルスプロモーション(編):健康なくに2011.pp71-79, 2011,医療文化社
3) http://www.who.int/mental_health/emergencies/mh_IASC_guideliness_japanese.pdf
4) 佐々木亮平,岩室紳也:災害を支える公衆衛生ネットワーク/こころのケアとは(ハイリスクアプローチの視点に学ぶ).公衆衛生76(11):891-895, 2012
5) 佐々木亮平,岩室紳也:災害を支える公衆衛生ネットワーク/被災地の復旧,復興に不可欠な公衆衛生機能とは.公衆衛生76(5):397-401, 2012
6) 佐々木亮平:専門支援チーム撤退がもたらす新たな力~復興へ向かう陸前高田市の今・第七報.月刊「地域保健」42(11):60-67, 2011
7) 佐々木亮平,岩室紳也:災害を支える公衆衛生ネットワーク/健康・生活調査(全戸訪問調査).公衆衛生76(8):640-644, 2012
8) http://www.koshu-eisei.net/saigai/rikuzentakatakaigi.html
9) http://www.bousai.go.jp/4fukkyu_fukkou/pdf/kokoro.pdf
10) 鈴木友里子:災害を支える公衆衛生ネットワーク/災害後のこころのケア.公衆衛生76(5):340-341, 2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら