icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生76巻12号

2012年12月発行

公衆衛生Books

―R・ウィタカー(著),小野善郎(監訳)―『心の病の「流行」と精神科治療薬の真実 フリーアクセス

ページ範囲:P.996 - P.996

文献概要

 (前略)本書の著者であるロバート・ウィタカーの知的探求の出発点はきわめて明快である――画期的な精神科治療薬が普及したのに,精神疾患の転帰は薬物療法が導入される以前よりも決して良くなっていないどころか,むしろ悪化しているようにさえ思われるのは何故なのだろうか.薬物療法が有効であるとすれば,その疾病の転帰は良くならなければならないのは当然である.疾病の症状は軽減し,病期は短くならなければならないはずである.しかし,精神科医療の現場は,より長期的に薬物療法を必要とする人たちが増え,そもそも精神疾患を有する人々が急増し,まさに現代の「流行病」になっているのが現実である.(中略)

 著者も明確に述べているように,本書は決して精神科薬物療法を否定するものではない.そうではなく,本書は,今日において「既成事実」となっている精神疾患に対する薬物療法と,その根拠となっている「仮説」の意義と限界を提示することによって,精神科医だけでなく,精神保健関係者,患者とその家族,そして広く社会全般の人々が,精神疾患とその治療をより良く理解するために必要な正しい情報の受け取り方,すなわちメディア・リテラシーに資するものと言えよう.精神科医療だけに限らず,患者と家族に最終的な治療の選択が委ねられることが一般的になっている今日の医療においては,医学情報を受け取るスキルはますます重要になるだろう.(後略)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら