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沈思黙考【最終回】
ルールと「情の感覚」のはざまで
著者: 林謙治1
所属機関: 1国立保健医療科学院
ページ範囲:P.1005 - P.1005
文献購入ページに移動入所者は老人であり,ほとんどは何らかの慢性疾患を抱えている.入院治療はともかく,きちっと健康管理をするには,いちいちクリニックに送るよりは,所内である程度の医療を認めたほうが入所者は助かるはずである.このような制度では臨床経験のある元気な医師は勤務を躊躇するであろう.一旦入院したとしても急性期を過ぎ,病気が長引いた場合,むしろ在宅医療が勧められる.老健ではリハビリが主であるからである.しかしながら高齢者世帯が急増している昨今,家庭の介護能力が著しく落ち,受け皿にならないケースが多い.テレビで報道されているような悲惨な情景はもはや特別なものではない.民間人としての違和感は,法に規定された制度と現実のギャップである.日本は法治国家であるから何事も法律に沿って実行すればよいという発想は,前回触れたようにパリサイ人と同じである.
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