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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生76巻3号

2012年03月発行

文献概要

活動レポート

職域における通信による飲酒行動変容プログラムの長期効果

著者: 足達淑子12 田中みのり1 高梨愛子3 渡邊ちさと4 小林和弘5 武見ゆかり6

所属機関: 1あだち健康行動学研究所 2財)日本予防医学協会 3札幌市白石区役所 4札幌市豊平区役所 5札幌市職員共済組合 6女子栄養大学

ページ範囲:P.250 - P.254

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はじめに

 アルコール関連問題は,健康被害と社会・経済への悪影響の両面から,公衆衛生上の重要課題である1).WHO(世界保健機関)は,アルコールの害は早死や種々の障害における世界第3位の危険因子と指摘した2).日本では,多量飲酒者は男性の10~13%,女性の3~6%と,問題飲酒者は654万人,有害使用は218万人,依存症は80万人,死亡は3万5千人と推計されている1).健康日本21の中間評価では,多量飲酒者,適正飲酒の知識保有の比率は改善が認められず3),一般成人に対する一次予防対策は不十分である.

 1980年以降,欧米では飲酒行動修正の介入研究が積極的になされ,短期行動カウンセリング(以下,短期介入)の1年後までの効果が確認されている4,5).本法は15分以内の行動変容面接であるが,禁煙とは異なり,効果が期待できるのは複数回の介入とされる.米国では短期介入はすでに一般医や対象者への普及段階にあるが,日本では本格的な介入研究6)が緒についたばかりで,指導者訓練や臨床現場への導入など課題が多い.一方,情報提供のみでも効果があるとの報告4~6)もあり,節酒希望者も相当数存在すると予想されることから,適正飲酒知識の普及と節酒希望者への効果的な教育法の開発が急がれる.

 本研究ではこれらの背景を踏まえ,これまで減量7)と睡眠改善8)で長期効果が確認されている簡素な行動変容法を,職場の飲酒コントロール希望者に用いて6か月後まで追跡し,飲酒量と飲酒習慣行動の変化を検討した.その方法とは,飲酒関連行動の自己評価と標的行動の特定および行動記録からなる行動療法であった9)

参考文献

1) 日本アルコール関連問題学会,日本アルコール・薬物医学会,日本アルコール精神医学会(編集):簡易版「アルコール白書」,2010
2) WHO:Strategies to reduce the harmful use of alcohol, 2010
3) 厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会:「健康日本21」中間評価報告書,2007
4) Whitlocker, et al:Behavioral counseling intervention in primary care to reduce risky/harmful alcohol use by adults. Ann Intern Med 140:557-568, 2004
5) Bertholetn, et al:Reduction of Alcohol consumption by brief alcohol intervention inprimary care. Arch Intern Med 165:986-995, 2005
6) 杠岳文,他:多量飲酒者に対する治療的介入手法の開発とその効果評価に関する研究.厚生労働科研「わが国における飲酒の実態ならびに飲酒に関連する生活習慣病,公衆衛生上の諸問題とその対策に関する総合的研究」(主任研究者/石井裕正).平成21年度総括・分担研究報告書,pp39-43, 2010
7) 足達淑子,他:通信による簡便な生活習慣改善プログラム.肥満研究12(1):19-24, 2006
8) Adachi Y, et al:Y A brief behavior therapy administered by correspondence improves sleep and sleep-related behavior in poor sleepers. SBR 6:16-21, 2008
9) 国柄后子,他:選択メニューによる6つの生活習慣変容プログラム.日本公衛誌49:525-534, 2002
10) NIH:Helping patients who drink too much, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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