icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生76巻4号

2012年04月発行

文献概要

特集 地域医療の現状と将来展望

低蔓延時代に向けた結核医療体制の課題と展望

著者: 阿彦忠之1

所属機関: 1山形県衛生研究所

ページ範囲:P.279 - P.282

文献購入ページに移動
低蔓延への移行期を迎えて

 結核予防法が制定された1951年当時,わが国の結核罹患率(人口10万対)は698.4であった.同法に基づく総合的な対策の下で結核患者数は急速に減少し,1975年には罹患率が100を切った.しかし,1980年頃から減少速度が鈍化し,一時は増加傾向を見せたことから,1999年に厚生大臣(当時)が「結核緊急事態」を宣言し,関係機関団体等に対策の徹底を促した.その効あってか,2000年以降は患者数が再び減少に転じている.2007年には結核予防法が廃止され「感染症の予防及び感染症の患者の医療に関する法律(以下,感染症法)」に統合されたが,同年には罹患率が20を下回り,2010年は18.2まで低下した.これでわが国も,結核の低蔓延国(罹患率<10)への移行期を迎えたと言えるだろう.

 しかしながら,この移行期は非常に難しい時期でもある.結核患者数の減少に伴い,結核に対する国民(特に医療従事者)の関心が一層低下し,結核の診断の遅れによる患者の重症化や,集団感染の増加などが懸念されるからである.また,この移行期に結核医療に関する地域資源が,人材(結核の診療経験豊富な医師など)および施設環境(結核病床など)の両面から過度に痩せ細ってしまった場合,罹患率が低蔓延国の水準に達する前に,結核の予防・医療の質的確保が困難になるおそれもある.加えて,わが国では結核の疫学的特徴や医療資源などの都道府県格差が大きく,各地域の課題に応じた効果的な医療体制の再構築が求められているところである.

参考文献

1) 阿彦忠之:罹患構造の変化に対応した結核の患者発見・予防対策の提案.厚生労働省新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業「罹患構造の変化に対応した結核対策の構築に関する研究」(研究代表者:石川信克),平成20~22年度総合研究報告書,pp51-68,2011
2) 吉山崇:対策評価に関する研究.厚生労働省新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業「罹患構造の変化に対応した結核対策の構築に関する研究」(研究代表者:石川信克),平成22年度総括・分担研究報告書,pp223-272,2011
3) 久保秀一:地域関係機関連携による結核の早期発見の取り組み.結核86(12):972-974,2011
4) 高鳥毛敏雄,加藤誠也,他:低まん延に向けた結核対策のあり方(第83回総会シンポジウム).結核84(2):91-104,2009
5) 飛世克之,加藤誠也,他:感染症法のもとでの結核医療のあり方(第84回総会シンポジウム).結核85(2):95-111,2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら