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文献概要
沈思黙考
災害時の遺体処置に尊厳を
著者: 林謙治1
所属機関: 1国立保健医療科学院
ページ範囲:P.297 - P.297
文献購入ページに移動埋葬に係わった関係者によれば,現場の作業者として自衛隊員のみならず,医師でさえこれほど大量の遺体処置に短期間のうちに立ち会った経験がなく,精神的ストレスは言い知れぬほど大きなものであったと言う.確かに遺体の同定をきちっとできなければ,法的には行方不明者と同じ扱いになり一定期間ののち,推定死亡者としてその後の手続きが行われる.その間遺産相続,生命保険等の処理に手間取ることは間違いない.しかしながら,遺体同定の遅延は単に経済的な問題に止まらず,遺族の精神的な問題にも大きな影響を及ぼす.報道によく見るように,行方不明者の遺体が同定されたとき,家族は「これでホッとした」とか「これで心の区切りがついた」とインタビューに答えているように一応の安堵感を示し,将来の生活への決意を新たにしている.逆に行方不明者を抱えた家族は,中途半端の気持ちで悲しみを引きずることになる.
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