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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生76巻6号

2012年06月発行

雑誌目次

特集 運動とは何か

フリーアクセス

ページ範囲:P.427 - P.427

 わが国では高度経済成長期以降,交通機関の発達や産業構造の高度化に伴い,日常生活における身体活動量が著しく低下しました.そして,豊かな食生活がもたらされた結果,わが国では生活習慣病の増加が最大の健康課題となっています.

 また,運動不足による子どもの体力(筋力)低下は深刻であり,彼らが中高年期を迎える頃には,大きな問題となることが危惧されます.

人々にとっての「スポーツ」と「運動」の意味を考える

著者: 西山哲郎

ページ範囲:P.428 - P.431

はじめに

 今号の「運動とは何か」と銘打たれた特集は,専門アスリートを中心とした競争志向のスポーツ文化を尊重しつつも,スポーツを地域の社交のツールとして捉え直し,日々の生活に溶け込んだスポーツ実践(それを本誌では「運動」と呼ぶのだろう)を促進することによって,健康的な生活文化の建設に寄与するために企画されたと伺っている.昨今の行政府の動き,たとえば文部科学省が2010年に策定した「スポーツ立国戦略」1)や2011年に衆参両院で可決された「スポーツ基本法」2)では,国威高揚やスポーツ産業育成のために競技スポーツの振興が重要視されているものの,その成果は最終的に国民のスポーツ実践(運動)を牽引するものとして期待されている.すなわち,現行の政策展開に見られる,スポーツを地域社会の再生や健康で豊かな生活の実現に役立てようとする狙いは,本特集と一致している.

 こうした課題設定が時宜を得たものであるのは間違いないとしても,そもそも運動が嫌いな人やスポーツの文化的価値に懐疑的な人にまで説得的な議論をするには,少し遠回りになっても問題の外枠から議論する必要を感じている.人間の価値観の多様性を支持する社会学者として,より多面的な視点を設定してこの問題に取り組みたい.

子どもの発育と運動

著者: 草川功

ページ範囲:P.432 - P.436

はじめに

 1990年代後半から,男の子の将来の夢は,野球選手とサッカー選手が常に1位と2位を分けあっている.また最近では,小学生時代からスポーツ選手として注目される存在となり,そのまま日本を代表する一流選手になっている選手も多い.しかし一方では,一時は注目を浴びたことのあるスポーツ選手の不祥事も後を絶たない.

 また,時代と共に変化する家庭環境・生活環境により,子どもたちにとって,運動するということは身近なもののようで,実は特別なことになってしまったのかもしれない.本稿では,子どもたちの成長・発達と運動との関わりについて述べる.

定期的な運動(身体活動)のもたらす健康上の効果

著者: 小熊祐子

ページ範囲:P.437 - P.440

はじめに―現代社会と運動不足病

 「身体を動かすことは,健康に良い」ということは,古くから言われている.紀元前2500年には,中国の医師が定期的運動を指示したことが記録されている.ヒポクラテスの言にも“To keep well, avoid too much food, too little toil”とある.ただ,身体を動かすことが切実な問題となったのは,文明化,機械化が進んで,仕事の上でも,家事においても,あるいは交通手段としても,身体を動かす必要が少なくなってきてからである.それとともに,運動不足病とも言える種々の慢性疾患が問題となった.併せて,身体を動かすことにより発症リスクを軽減できる疾患が多いことも明らかになってきた.

 カナダのオンタリオ地区に住むアーミッシュ(Old Order Amish)は,宗教上の理由で,現代社会の文明機器を退け,車や家電,テレビ,パソコンなどを使用せず,自活している.このうちの98名を対象に調査したところ,1日の平均歩数は女性で14,196歩,男性で18,425歩と身体活動量が多く,平均BMIは約23kg/m2と低く,肥満や過体重者の割合も米国の平均に比し極端に低いことがわかった(図1)1).現代社会は,日常生活の中で必然的に行う身体活動が減ってしまった分,自発的に何らかの活動量アップをはからなければならない時代と言えよう.

メディカルチェックと運動処方

著者: 庄野菜穂子

ページ範囲:P.441 - P.447

はじめに

 運動は骨格筋の活動によって遺伝子や細胞レベルの様々な活性化をもたらし,全身の機能に影響を及ぼす.適切な運動を継続的に楽しみながら実施できれば,心身両面におけるフィットネスの維持・向上,疾病の発症予防効果,非薬物療法としての治療的効果等が期待できる.しかし一方では,体調や体力を踏まえない不適切な運動実施によって健康を損なう危険性もはらんでいる.

 公衆衛生従事者は,各種の疾病予防教室や介護予防教室,健診後の保健指導等において,運動を推奨することがあるだろう.内藤1)が述べているように,「公の立場から運動を奨励する場合は,介入故に生じうる有害事象を常に意識し,安全配慮とリスクマネージメントに留意しなければならない」.本稿では,主に中高年者を対象とした運動において,公衆衛生従事者が知っておくべきリスク管理対策としてのメディカルチェックと運動処方の概要について解説する.

性ホルモンと運動

著者: 相澤勝治 ,   目崎登

ページ範囲:P.448 - P.451

はじめに

 近年,女性アスリートの活躍はめざましく,トレーニング法やコンディショニングなど,女性のスポーツ環境をより充実させていくことが求められている.女性を取り巻く社会やスポーツ環境は大きく変化しており,かつスポーツに接する目的や意義も多様化している.このため,女性の各ライフステージにおける女性スポーツのあり方について考えることは重要である.

 性ホルモン(男性ホルモンと女性ホルモン)は,第二次性徴など心身の性差に働くことは知られている.女性においては,女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)によって月経周期が調節されている.女性ホルモンは閉経に伴い低下し,更年期障害や生活習慣病の発症と関連しており,女性の各ライフステージにおいて,女性ホルモンは重要な役割を担っている.一方,激しいトレーニングを伴う女性アスリートでは,月経周期の異常をもたらす「運動性無月経」が問題視されている.それゆえ,女性のスポーツ環境をより充実させていくには,スポーツの目的や各ライフステージに応じた運動やコンディショニングを考える必要がある.

 そこで本稿では,女性の月経周期と運動との関連性,体力や身体活動の性差について概説し,特に女性ホルモンの生理作用やパフォーマンス発揮に与える影響に焦点を当て,女性スポーツの可能性について考察する.

体温調節機能と運動

著者: 田中英登

ページ範囲:P.452 - P.455

はじめに

 身体運動は体温調節機能に様々なかたちで影響することが知られている.運動は体熱産生量を著しく増加させるため,これに見合った熱放散を行わないと体温が上昇してしまう.この運動時の熱放散には体外環境が影響する.ウォーミングアップやクールダウンは運動のパフォーマンスや障害予防の観点からも重要であり,体温調節系が密接に関連している.

 さらに,習慣的な運動は体温調節機能をはじめとする自律神経調節機能に大きく影響し,例えば低体温や冷え性などがその例でもある.また近年では,夏季の熱中症発生が問題となっており,熱中症発症は体温調節機能が関連するため,運動と熱中症との関係も一つのトピックである.このように,運動と体温調節機能の関わりは深く,このすべてを詳細に本稿で記述するのは困難であるが,以下簡単に紹介する.

地域における健康づくりの方向転換

著者: 内藤義彦

ページ範囲:P.456 - P.461

はじめに

 急激な少子高齢化の進行および経済の停滞が主因となって,社会保障の屋台骨が揺らいできた.特に,社会保障の大きな柱である健康保険制度は,国民皆保険が達成されてから半世紀が経過した今,持続可能性を危ぶむ声もある.原資である保険料収入に対する医療費支出の増加傾向は,今後も少子高齢化が進む限り不可避と言えそうだが,支出の多くを占めている生活習慣病の罹患または有病率を減らすことができれば,大幅な支出抑制が期待できる.

 最近の厚生行政の施策には生活習慣病に関わる記述を必ずというほど認めるが,現在の生活習慣病対策の要となる健康施策は,健康増進法に基づく「健康日本21」と高齢者医療確保法に基づく「特定健診・特定保健指導」と考えられる.前者は,主に生活習慣病の一次予防を中心とした集団戦略を,後者は,二次予防であるハイリスク戦略を重視している.

 本稿では,この2つの施策における運動・身体活動に関する現状と問題を略述し,地域において今後,運動・身体活動を普及させる,ひいては生活習慣病対策の効果を上げるために必要なことについて,事例を交えて考察してみたい.なお,公衆衛生と運動・身体活動に関する全般的なトピックの紹介およびその議論は,『日本公衆衛生学雑誌』の連載1~4)をご覧いただきたい.

視点

食品安全研究―農業経済学という視点

著者: 工藤春代

ページ範囲:P.424 - P.425

はじめに

 食品安全・衛生の確保は,公衆衛生学にとって古くから重要なテーマとなっている.一方,とりわけ2001年の国内でのBSE(牛海綿状脳症)確認をきっかけとして,農業経済学,社会学,法学など様々な領域から,「食品安全」研究に対する関心が高まっている.

 食品安全に関する研究には,食品化学,医学や微生物学,毒性学など,様々な自然科学的な知見が必要である.これに対して社会科学的な立場から,どのような貢献ができるだろうか.この点は,研究に取り組んで以来ずっと悩んできたことでもある.

 本稿では,農業経済学という農学分野の中でも社会科学に属する分野にいながら食品安全に関する研究にかかわっている者として,農業経済学からどのような視点を加えることができるのか,また公衆衛生学との連携について,私見を述べてみたい.

特別記事

原子力災害における放射線被曝の長期的課題―チェルノブイリ事故医療支援の経験を通して

著者: 菅谷昭

ページ範囲:P.462 - P.468

 過日,NHK学園国立本校で,医療支援活動のため,チェルノブイリ被災地で5年半暮らした経験がある松本市長・菅谷昭氏の実践報告「原子力災害における放射線被曝の長期的課題~チェルノブイリ事故医療支援の経験を通して」と題した講演会が開かれました.一部抜粋して,菅谷氏からの提言をご紹介します.

連載 人を癒す自然との絆・35

介助犬を育てる少女たち

著者: 大塚敦子

ページ範囲:P.470 - P.471

 昨年末,アメリカのカリフォルニアで,ある一風変わった卒業式に行ってきた.バーゲン大学という,世界で唯一「犬学」を専門とする大学の卒業式だ.この大学では,人と犬の関係についての研究,介助犬の育成,犬に関わるビジネスなどの分野で,なんと修士号まで取れる.

 式では,学生たちの他に,介助犬とクライアント(ユーザー)のチームも一緒に卒業する.共に壇上で卒業の喜びを共有するのは,その犬が子犬のときに世話をしたパピー・ペアレント,そして,訓練に関わった少女更生施設の少女たちだ.

保健活動のtry! 学会で発表しよう 論文を執筆しよう・15

「結果」

著者: 中村好一

ページ範囲:P.472 - P.476

今回は,論文主要4部分の3番目の「結果」について.

災害を支える公衆衛生ネットワーク~東日本大震災からの復旧,復興に学ぶ・3

災害時の情報共有の課題―インターネット活用の視点から

著者: 佐々木亮平 ,   岩室紳也

ページ範囲:P.478 - P.481

情報共有が被災地のエンパワーメントに

 発災当初から陸前高田市で行われてきた保健医療福祉に関する包括ケア会議では,情報を多くの関係者で共有することを通して,復旧,復興に向けた支援が円滑に行われることを狙っていた.しかし,当初の目的以外に,情報を被災地の関係者,被災者,支援者で共有することで,次なるステップが,先が,目標が,未来が見えるようになり,結果として関係者がエンパワーされ,安心感が生まれていた1).陸前高田市の戸羽太市長自身も被災者であり,奥様を亡くされた中で自ら本2)を執筆し,情報発信をし続けているが,被災地の情報が共有され続けることが,被災地のエンパワーメントにつながることを意識し続けたい.

講座/健康で持続的な働き甲斐のある労働へ─新しい仕組みをつくろう・3

過重労働と過労死をいかに防止するか

著者: 森岡孝二

ページ範囲:P.482 - P.485

 過重労働による極度の疲労とストレスで斃(たお)れる人が依然として後を絶たない1).男女の労働者全体で見ると,雇用の非正規化にともなう短時間労働者の増加で,平均労働時間は減少している.その反面,正社員は相変わらず働きすぎで,2010年のNHK「国民生活時間調査」によると,1日10時間を超えて働く「勤め人」の割合は,女性でも10%,男性では33%にも上る.政府,厚生労働省は,サービス残業における不払い賃金の是正には不十分ながら取り組んできたが,長時間残業に対しては実効性のある規制をしてこなかった.

 そこで本稿では,過労死防止基本法の制定の必要性にも触れて,どうすれば過重労働と過労死を防止することができるのかを,法制度や政府政策との関連で述べる.

「笑門来健」笑う門には健康来る!~笑いを生かした健康づくり・3

笑うと痛みが減る?―「笑い」と「痛み」との関連について

著者: 大平哲也

ページ範囲:P.486 - P.488

 笑いと疾病・健康との関連について,今回からは,具体的に笑いがどのような疾病や病態と関連する可能性があるのかを詳しく述べていきます.最初は「笑い」と「痛み」との関連についてです.痛みは自覚的症状の一つですが,同じ痛み刺激でもその感じ方には個人差があり,痛みには体質や心理的要因が影響すると考えられています.それでは,笑うことによって痛みは軽減されるのでしょうか?

フィールドに出よう!・6

その先で待っているのは,成長した自分と元気な子どもたち―ザンビアHIV母子感染予防に関するフィールド調査

著者: 大川純代

ページ範囲:P.489 - P.492

フィールドでのある日の午後

 2012年2月23日,ザンビア4度目の渡航から1週間目の午後.夏のザンビアに戻ってたちまち体調を崩した.蒸し暑い部屋で体のだるさ,喉の痛み,絶え間ない咳にじっと耐える.どうしても元気が出ない.facebookにぼやこうにも,インターネットは延々とつながらない.パソコンを開けるが,画面を眺めるばかりで少しも仕事が進まない.すると,突然夕立が来た.屋根を叩きつける大粒の雨,冷やっとした風,湿った土のにおいが五感を刺激した.目が覚めたかのように,「ここはザンビアだった.幼い子どもたちが元気に生きていけるように研究しているんだ」と実感した.

リレー連載・列島ランナー・39

忘れられない結核事案

著者: 郷右近初女

ページ範囲:P.493 - P.495

はじめに

 千葉県柏市の宮島浩二氏からリレーのバトンを受けました.

 私は柏市が平成20(2008)年4月に中核市になった時から3年間,柏市保健所に千葉県から派遣されていました.宮島氏は平成21(2009)年4月の異動で保健所勤務となり,2年間一緒に楽しく仕事をさせていただきました.

 平成21年は新型インフルエンザ(A/H1N1)の世界的大流行の年で,日々,目が回るような忙しさとスピード感の中での対応でしたが,宮島氏は総務企画課副参事という役職であり,様々な場面で事務方の中核的役割を発揮してくれたことがとても印象深く残っています.あのような事態の中で感染対策担当課が前線の対応を図りながら,日々変化する局面の事務的な対応までを担当するのは厳しいと感じていました.そんな中で事務系と技術系の職員が課を越えて頻繁に情報交換をしながら,各々の役割を自覚して,スムーズに連携できたのではないかと思っています.

 私は病院勤務を経て,昭和58(1983)年に千葉県の保健所保健婦として採用され,平成23(2011)年に現所属に異動になるまで保健所に勤務していました.

 私が就職した当時の千葉県の保健所は,保健婦・栄養士・統計担当が1つの課に所属していました.業務としては母子や難病対策の主管課でした.精神保健や結核は患者支援が主でした.保健所の組織改革によって事業担当制となり,平成14(2002)年の異動で野田保健所勤務になった年に初めて,結核の担当になりました.保健師3人で難病・HIV/AIDS・結核・感染症・精神保健を分担しており,1人担当制という状況でした.そのような中で同年4月に,「市内の従業員宿舎から結核の患者が出ているが,事業所は接触者健診(当時は定期外健診)を拒否している」と前任者から言われ,不安になりながら引き継いだ「忘れられない結核事案」について,今回書いていこうと思います.

衛生行政キーワード・82

災害医療等のあり方に関する検討会について

著者: 村上佳菜子

ページ範囲:P.496 - P.498

はじめに

 災害医療体制は,1995(平成7)年の阪神・淡路大震災を踏まえて,災害拠点病院の整備,広域災害・救急医療情報システム(EMIS)の整備,災害派遣医療チーム(DMAT)の養成等が行われてきました.また,2006(平成18)年の医療法改正において,都道府県が作成する医療計画の記載事項の1つとして「災害時における医療」に係る事項が追加され,2008(平成20)年度からの第5次医療計画に基づいて,各都道府県において災害医療体制の整備が行われてきました.

映画の時間

―真夜中のパリに魔法がかかる―ミッドナイト・イン・パリ

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.436 - P.436

 今年度のアカデミー賞の各部門を「アーティスト」と争った「ミッドナイト・イン・パリ」をご紹介します.舞台は題名の如くパリ,ハリウッドの売れっ子脚本家のギル(オーウェン・ウィルソン)は,プールつきのビバリーヒルズの生活を捨てても,パリの屋根裏部屋に住みたいというほど,文化香るパリの暮らしにあこがれています.冒頭,それを聞いた友人が「屋根裏部屋なんかで暮らしたら結核になるぞ」と言うセリフがあります.結核の発病に影響を与える因子についてはまだ不明の点もありますが,環境要因も無視できず,欧米でもこのような認識を持たれているところが垣間見てとれます.

 ギルは婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)とパリに来ていますが,彼女はパリに移住することには反対です.小さなことでは気が合うものの,人生観では意見が合いません.主人公のギルはひとりで深夜のパリを散策します.道に迷った彼の前に古いプジョーが停まり,誘われるまま車に乗り込んで訪れたパーティーの主催者は,なんとジャン・コクトー,そこは1920年代のパリだったのです.

沈思黙考

「特定健診・保健指導のあり方検討会」にて

著者: 林謙治

ページ範囲:P.461 - P.461

 健康日本21の最終評価を受けて,今後の健康政策につながるNext Plan策定との関連で,平成23年度に多くの政府委員会が立ち上がった.私が参加したいくつかの委員会においても白熱した議論が戦わされたが,このなかでも「特定健診・保健指導のあり方検討会」では,公衆衛生と臨床医学のスタンスの違いがくっきり表れ,印象深い委員会の1つであった.

 大きな論点の1つは従前同様,腹囲測定を健診のEntry Pointにするかどうかである.多くの臨床家はメタボ症候群を発見することが目的であるので,従前通りでよいとの意見であった.それに対して,肥満者より少数かもしれないが痩せた人でもメタボ症候群が発見されるので,腹囲測定もしくはBMIを健診のEntry Pointとした場合,このグループは最初から健診対象とならず,まして保健指導の対象となることもないという反論である.ここで問題となるのは,痩せた人のメタボ症候群になるリスクはなにか判然としないところがある.喫煙や高血圧という説もあるようであるが,高血圧はそもそもメタボ症候群の症状の1つである.生活習慣に関連しない遺伝素因によるメタボ症候群の発現があるかもしれない.

お知らせ

第33回 保健活動研修会 フリーアクセス

ページ範囲:P.468 - P.468

日時:平成24年8月22日(水)~8月24日(金)

開催場所:自治医科大学地域医療情報研修センター(自治医科大学構内施設)

 〠329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-160(申込住所と同じ)

第12回 健康企画・評価研修会 フリーアクセス

ページ範囲:P.498 - P.498

日時:平成24年8月2日(木)~8月3日(金)

開催場所:自治医科大学地域医療情報研修センター(自治医科大学構内施設)

 〠329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-160(申込住所と同じ)

予防と臨床のはざまで

第30回国際産業衛生学会参加ダイジェスト(その2)

著者: 福田洋

ページ範囲:P.477 - P.477

 本コラムを連載させて頂いてから,早いもので通算100回,年12回として単純に8年以上となりました.目次を振り返ってみますと,連載当初は予防と臨床の両方に関わっている立場から感じる気づきを書いていました.予防医療とITの歴史(?)や,予防と臨床のボーダーラインの活性化についてはシリーズもので書きました.国内外の学会ダイジェストも沢山書かせて頂いたのですが,時系列に並べるとテーマの移り変わりから,予防と臨床のはざまで起きる様々な課題の歴史を感じることができます.原稿も溜まってきましたので,医学書院さん,是非単行本化をお願いします!(笑)

 さて,前回に引き続き3月18~23日までメキシコのカンクンで行われたICOH(第30回国際産業衛生学会,http://www.icohcongress2012cancun.org/)報告の続きです.2日目以降,毎日朝8時半から2つのKeynote(基調講演),その後ポスターセッションを挟んで6つのSemi plenary(準基調講演),さらに午後のポスターセッションを挟んでミニシンポジウム,ワークショップ特別セッション,一般口演等が続くという構成でした.

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投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.499 - P.499

あとがき・次号予告 フリーアクセス

著者: 品川靖子

ページ範囲:P.500 - P.500

 中学高校時代の6年間を軟式テニス部で過ごした私の右腕は,卒業後もしばらくの間左腕に比して太く長い時代が続きましたが,就職後スポーツをする機会が減り,出産を境にまったく遠ざかってしまってからは左右差もなくなり,両腕ともに衰えてしまいました.

 過去の“貯筋”が底尽きた私は,歩くと疲れるし重い荷物を持つのが苦痛で,すぐに乗り物を使うようになり,ますます筋力が低下しました.そして,疲れやすい,風邪をひきやすい,筋・関節を痛めやすいなどの不調に見舞われ,「運動しなければ」と思いつつ実行できない日々が続きました.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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