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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生76巻6号

2012年06月発行

文献概要

特集 運動とは何か

地域における健康づくりの方向転換

著者: 内藤義彦1

所属機関: 1武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科

ページ範囲:P.456 - P.461

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はじめに

 急激な少子高齢化の進行および経済の停滞が主因となって,社会保障の屋台骨が揺らいできた.特に,社会保障の大きな柱である健康保険制度は,国民皆保険が達成されてから半世紀が経過した今,持続可能性を危ぶむ声もある.原資である保険料収入に対する医療費支出の増加傾向は,今後も少子高齢化が進む限り不可避と言えそうだが,支出の多くを占めている生活習慣病の罹患または有病率を減らすことができれば,大幅な支出抑制が期待できる.

 最近の厚生行政の施策には生活習慣病に関わる記述を必ずというほど認めるが,現在の生活習慣病対策の要となる健康施策は,健康増進法に基づく「健康日本21」と高齢者医療確保法に基づく「特定健診・特定保健指導」と考えられる.前者は,主に生活習慣病の一次予防を中心とした集団戦略を,後者は,二次予防であるハイリスク戦略を重視している.

 本稿では,この2つの施策における運動・身体活動に関する現状と問題を略述し,地域において今後,運動・身体活動を普及させる,ひいては生活習慣病対策の効果を上げるために必要なことについて,事例を交えて考察してみたい.なお,公衆衛生と運動・身体活動に関する全般的なトピックの紹介およびその議論は,『日本公衆衛生学雑誌』の連載1~4)をご覧いただきたい.

参考文献

1) 内藤義彦:運動・身体活動と公衆衛生(1)公衆衛生分野において運動・身体活動をどう考えるか.日本公衛誌55(3):186-188,2008
2) 内藤義彦:運動・身体活動と公衆衛生(9)これまでの連載を振り返って;新しい身体活動量ガイドライン.日本公衛誌55(11):786-790,2008
3) 内藤義彦:運動・身体活動と公衆衛生(19)これまでの連載を振り返って第二弾;身体活動量をどう評価するか.日本公衛誌56(11):811-817,2009
4) 内藤義彦:運動・身体活動と公衆衛生(23)連載を終わるに当たって.日本公衛誌57(4):312-315,2010
5) 厚生労働省:「健康日本21」最終評価の公表.厚労省ホームページ,http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001r5gc.html
6) 原田和弘,他:健康づくりのための運動指針2006の認知状況と他の健康づくり施策の認知および人口統計学的変数との関連.日本公衛誌56(10):737-743,2009
7) Ikeda N, et al:What has made the population of Japan healthy? Lancet 378(9796):1094-1105,2011
8) Geoffrey Rose(著),曽田研二・田中平三(監訳):予防医学のストラテジー―生活習慣病対策と健康増進.医学書院,1998
9) 金川幸司:協働型ガバナンスとNPO―イギリスのパートナーシップ政策を事例として.晃洋書房,2008
10) Puska P, et al:The North Karelia Project;from North Karelia Project to National Action, Helsinki University Printing House. Helsinki, 2009
11) 井上茂,他:身体活動のトロント憲章(日本語版);世界規模での行動の呼びかけ.運動疫学研究13(1):12-16,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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