文献詳細
文献概要
沈思黙考
専門分化と組織
著者: 林謙治1
所属機関: 1国立保健医療科学院
ページ範囲:P.536 - P.536
文献購入ページに移動専門訓練の結果,分業が可能となるわけだが,それぞれの職種の中に独自の言語,行動様式が生まれ,いわゆる組織文化が醸成される.各専門分野は構成員の共通利益,出身地などさまざまな次元があり,錯綜する複雑な関係がさらに緊密度により修飾され,社会のありようを規定している.筆者が長い間,厚労省の公衆衛生の教育研究機関に在職したわけだが,下線部分の3つのキーワードだけでも,対外的な接触においてさまざまな調整のために多大なエネルギーを要した.特に指定管理職に就いてからの10年間は,ほとんどこれに忙殺されてきた.対外的な調整は言葉を代えて言えば,厚労省・公衆衛生・教育研究機関の3つのキーワードを組織内に一体化させないと,たちまち存在価値を問われかねないことを意味する.公衆衛生と言っても,霞ヶ関の行政の立場と,国立保健医療科学院(以下,科学院)の教育研究の立場は同じとは言えない.行政には政策施行のための調整機能が求められ,常に科学的でなくても,Politically Correctである必要がある.また,それを実行するための行政権限が付与されている.失敗した場合,責任を負わなければならない立場にある.科学院がPolitically Correctばかりに同調していると,Scientifically Incorrectに陥りかねず,社会的信用を失う.もちろんPolitically CorrectとScientifically Correctが同時に成り立つのが理想的である.大学はPolitically Correctであることを無視できる立場にあるが,実際の施策は政治的に動いているので,賛成反対は別として,政治の意味を理解しないと,公衆衛生の立場を失うこともまた真実である.
掲載誌情報