文献詳細
文献概要
特集 国際感染症対策の現状と課題
グローバルヘルスのガバナンス―現状と課題
著者: 中谷比呂樹1
所属機関: 1WHO本部事務局
ページ範囲:P.586 - P.591
文献購入ページに移動20世紀末に始まったグローバル化の流れは,21世紀になりますます加速し,世界を全体として見た場合,経済的に豊かになり,健康面においても平均寿命をはじめ各種指標の改善を見ている.その一方,繋がり合った世界において,感染症が一気に拡がったり,感染症によってある国,あるいは地域の経済活動が停滞すれば,世界的な工業製品の分業体制に悪影響を与えることは,2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)や,2009年の新型インフルエンザの例を見ても容易に理解できる.
さらに経済的な発展が市民社会の成熟を生み,保健を含む公益増進活動は,政府が独占するのではなく,市民社会や民間財団,産業界も参加して進めるという傾向が進んでいる.また9.11以降,途上国の貧困撲滅や健康改善は,貧困とテロの悪循環を断ち,広い意味での国際的安全保障に資するという発想から,21世紀の最初の10年,保健関係のODA(Official Development Assistance:政府開発援助)は目覚ましい成長を遂げた.
国際感染症分野,特に,筆者が担当するエイズ・結核・マラリア分野は,このようなトレンドを先駆けてきた分野であるので,本稿ではこれら三大感染症を例として,グローバルヘルスのガバナンスの現状と課題について述べてみたい.
参考文献
掲載誌情報