文献詳細
視点
文献概要
はじめに
近年,人や地域の「絆」の重要性が再認識されている.こうした背景から,福祉や教育,地域づくりなど様々な分野で,ソーシャルキャピタルの醸成・多世代共生社会の有用性が指摘されている.その根幹にあるのが世代間交流と言える.
しかしながら,核家族化,プライバシー保護・匿名化のもと,コミュニティの崩壊が進むわが国においては,一度疎遠となった世代と世代をつなぐには,自然発生的でインフォーマルな交流のみでは不十分で,熟慮された「仕掛け(プログラム)」を要するとの指摘がある1).本稿ではこのような仕掛けを「世代間交流プログラム」と呼ぶこととする.地域では行政・NPOや住民により,世代間交流をテーマに多様な事業が企画されている.
ところが,世代間交流は,総論としては万人から推奨されるものの,具体的なプログラムとしては普及しにくいのが現実である2).
このような世代間交流プログラムの現状と課題を明らかにするために,筆者らは平成16(2004)年より高齢者ボランティアによる子どもへの絵本の読み聞かせを通じた世代間交流によるモデル事業“REPRINTS(Research of productivity by intergenerational sympathy)”を継続してきた3).
本稿の目的は,この実践研究の経験をもとに,世代間交流が普及しにくい理由について言及し,その課題を解決するための糸口を提示することである.
近年,人や地域の「絆」の重要性が再認識されている.こうした背景から,福祉や教育,地域づくりなど様々な分野で,ソーシャルキャピタルの醸成・多世代共生社会の有用性が指摘されている.その根幹にあるのが世代間交流と言える.
しかしながら,核家族化,プライバシー保護・匿名化のもと,コミュニティの崩壊が進むわが国においては,一度疎遠となった世代と世代をつなぐには,自然発生的でインフォーマルな交流のみでは不十分で,熟慮された「仕掛け(プログラム)」を要するとの指摘がある1).本稿ではこのような仕掛けを「世代間交流プログラム」と呼ぶこととする.地域では行政・NPOや住民により,世代間交流をテーマに多様な事業が企画されている.
ところが,世代間交流は,総論としては万人から推奨されるものの,具体的なプログラムとしては普及しにくいのが現実である2).
このような世代間交流プログラムの現状と課題を明らかにするために,筆者らは平成16(2004)年より高齢者ボランティアによる子どもへの絵本の読み聞かせを通じた世代間交流によるモデル事業“REPRINTS(Research of productivity by intergenerational sympathy)”を継続してきた3).
本稿の目的は,この実践研究の経験をもとに,世代間交流が普及しにくい理由について言及し,その課題を解決するための糸口を提示することである.
参考文献
1) 杉岡さとる,他:今,なぜ世代間交流なのか.社会教育61:30-33, 2006
2) 藤原佳典:第II章2節 教育現場における高齢者ボランティアを阻む諸要因―「りぷりんと」プロジェクトから.世代間交流学の創造~パラダイムの転換を視座として(草野篤子,他著).pp110-121, あけび書房,2010
3) 藤原佳典,他:都市部高齢者による世代間交流型ヘルスプロモーションプログラム“REPRINTS”の1年間の歩みと短期的効果.日本公衛誌53:702-714, 2006
4) 世代間交流プロジェクト「りぷりんと・ネットワーク」(編著),藤原佳典(監修):シニアから君たち(小学校高学年・中学生)へ「読み聞かせ」に託すこころのリレー.ライフ出版,2010
5) 世代間交流プロジェクト「りぷりんと・ネットワーク」(編著),藤原佳典(監修):子どもとシニアが元気になる絵本の読み聞かせガイド.ライフ出版,2008
6) Fujiwara Y, et al:Intergenerational health promotion program for older adults;“REPRINTS” the experience and its 21 months effects. Journal of Intergenerational Relationship 7:7-39, 2009
7) 藤原佳典,他:児童の高齢者イメージに影響をおよぼす要因“REPRINTS”高齢者ボランティアとの交流頻度の多寡による推移分析.日本公衛誌54:615-625, 2007
8) 藤原佳典,他:高齢者による学校支援ボランティア活動の保護者への波及効果―世代間交流型ヘルスプロモーションプログラム“REPRINTS”から.日本公衛誌57:458-466, 2010
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