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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生76巻9号

2012年09月発行

文献概要

特集 独居高齢者と健康

大都市に暮らす独居男性高齢者の生活課題と自立支援

著者: 河野あゆみ1 田高悦子2

所属機関: 1大阪市立大学大学院看護学研究科 2横浜市立大学医学部看護学科

ページ範囲:P.702 - P.705

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独居男性高齢者の特徴

 平成22(2010)年に実施された国民生活基礎調査1)では,65歳以上の者のいる世帯のうち,独居世帯の割合は24.3%を占める.平成元(1989)年における65歳以上の者のいる世帯の独居世帯割合は14.7%であったことから,約20年間に独居高齢者が急速に増えていることがわかる.つまり,わが国の高齢化に関する保健医療福祉の問題を考える上で,独居高齢者のQOL(quality of life)をいかに維持し,向上させるかは重要なテーマの一つである.

 わが国では,女性の平均寿命は長いこと,夫より妻の年齢が若いことが一般的であることから,独居高齢者の大部分は依然,女性である.しかし一方で,独居高齢者に占める男性高齢者の構成割合は,平成元年は19%であったのが,平成22年は28%に増加してきていることを見逃してはならない.なぜならば,男性高齢者は一人暮らしになったときには,死亡のリスクが高まること2),健康状態が悪くなりやすいこと3),サポート・ネットワークが小さくなること4)などが報告されており,独居女性高齢者に比べると,健康や生活に関する問題を持っているハイリスク集団であるからである.加えて,地域ケアを提供するときに,独居男性高齢者に保健医療福祉職がアプローチすることが難しく5,6),支援の手がなかなか届きにくい人々であるとも考える.

参考文献

1) 厚生労働省大臣官房統計情報部:平成24年グラフでみる世帯の状況;国民生活基礎調査(平成22年)の結果から http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-01.pdf(2012/06/01アクセス)
2) Kandler U, et al.:Living alone is a risk factor for mortality in men but not women from the general population;a prospective cohort study. BMC Public Health 16(7):335, 2007
3) Meisinger C, et al.:Living alone is associated with an increased risk of type 2 diabetes mellitus in men but not women from the general population;the MONICA/KORA Augsburg Cohort Study. Psychosom Med 71(7):784-788, 2009
4) 西村昌記:一人暮らし高齢者の生活課題 サポート・ネットワークの観点から.老年精神医学雑誌15(2):184-191, 2004
5) 上原健司,他:同性からみた男性へのアプローチ 性差を超えた保健師活動を目指して.保健師ジャーナル63(11):984-994, 2007
6) 山本恭子:団塊世代の男性の地域参加支援.保健師ジャーナル63(11):978-982,2007
7) 河合克義:大都市の一人暮らし高齢者と社会的孤立.法律文化社,2009
8) 鈴木修治,他:仙台市宮城野区内T地区における独居高齢者の健康と生活実態に関する調査.厚生の指標51(13):33-37, 2004
9) 辻正二,他:エイジングの社会心理学.北樹出版,2003
10) 和久井君江,他:大都市部独居高齢者の抑うつとその関連要因.日本地域看護学会誌9(2):32-36,2007
11) 河野あゆみ,他:大都市に住む一人暮らし男性高齢者のセルフケアを確立するための課題 高層住宅地域と近郊農村地域間の質的分析.日本公衛誌56(9):662-673,2009
12) 藤川君江,他:限界集落で暮らす1人暮らし男性高齢者の現状―Q島の1人暮らし高齢者へのインタビューから.日本精神科看護学会誌53(3):154-158,2010
13) 河野あゆみ,他:独居男性高齢者のための地域交流促進をめざしたグループワークにおけるプロセス.日本地域看護学会誌12(2):45-50,2010
14) 藤田倶子,他:独居男性高齢者を対象にした食事バランスガイドを用いた健康教育の試み.日本地域看護学会誌14(1):49-54,2011
15) 田髙悦子,他:大都市における一人暮らし男性高齢者の地域を基盤とした自立支援プログラムの開発と有効性の評価.日本地域看護学会誌14(2):53-61,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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