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沈思黙考
賢者から何を,どう引き継ぐか
著者: 林謙治1
所属機関: 1国立保健医療科学院
ページ範囲:P.726 - P.726
文献購入ページに移動古典研究の師匠は,国学の泰斗賀茂真淵,万葉研究の専門家である.宣長が数多くの和歌を作っては師匠の品評を仰いだが,万葉形式にもとるということで,ことごとく駄作とされた.師匠の酷評にもめげず,歌を送り続けた図々しさがあったという.源氏物語の研究では本文テキストが重要で,歌の部分は付け足しという当時の通説に異を唱えた.歌こそ本音の表現であり,本文テキストは敬語でしか話し手が同定できず,表現も婉曲であるので内容の真意をとらえにくいとした.常にオリジナルを求めた学者のようだ.宣長の有名な歌「敷島の大和の心を人問はば,朝日に匂う山桜花」は彼の美学の粋であり,死後本業の医者としての正式の第一の墓には遺骸を入れず,桜の咲く山のふもとの第二の墓に埋葬してほしいと遺言したのであった.
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