文献詳細
特集 公衆衛生の危機
文献概要
はじめに
今,社会全体が過渡期にあり,再生の苦しみにあえいでいる.公衆衛生も例外ではない.法整備や制度充実によって,高い健康水準と世界的な長寿を実現した日本の公衆衛生システムも,多くの問題を抱えている.
現実的な危機の深刻さは,事件そのものの規模や重大性と,それに対応できるシステム能力との間の落差に他ならない.システムがしっかりしていれば,被害の多くは防げるが,制度疲労があると社会的負荷も増す.近年,従来の制度では限界があると感じる課題も増えてきた.また人材面でも,専門性やアイデンティティへの不安がある.これまで,様々な問題解決を先送りにしてきたつけが回ってきたようだ.
一見盤石に見える日本の公衆衛生システムは本当に機能しているのか,課題への対応能力はどうか,どう改革すべきなのか,が本論の問題意識である.システム危機を放置すれば,人災につながる.厳しい現状の認識は痛みを伴うが,これは改善と向上の出発点でもある.時代の転換期である今こそ,真剣に現実に向き合い,その本質的問題とこれからの方向性を考えたい.
今,社会全体が過渡期にあり,再生の苦しみにあえいでいる.公衆衛生も例外ではない.法整備や制度充実によって,高い健康水準と世界的な長寿を実現した日本の公衆衛生システムも,多くの問題を抱えている.
現実的な危機の深刻さは,事件そのものの規模や重大性と,それに対応できるシステム能力との間の落差に他ならない.システムがしっかりしていれば,被害の多くは防げるが,制度疲労があると社会的負荷も増す.近年,従来の制度では限界があると感じる課題も増えてきた.また人材面でも,専門性やアイデンティティへの不安がある.これまで,様々な問題解決を先送りにしてきたつけが回ってきたようだ.
一見盤石に見える日本の公衆衛生システムは本当に機能しているのか,課題への対応能力はどうか,どう改革すべきなのか,が本論の問題意識である.システム危機を放置すれば,人災につながる.厳しい現状の認識は痛みを伴うが,これは改善と向上の出発点でもある.時代の転換期である今こそ,真剣に現実に向き合い,その本質的問題とこれからの方向性を考えたい.
参考文献
1) ロバートKマートン(著),森東吾(訳):社会理論と社会構造.みすず書房,1961
2) 實成文彦:公衆衛生の新しい潮流と公衆衛生看護学への期待.保健の科学53(6):364-375,2011
3) Winslow CEA:The untilled fields of public health. Science 51:23, 1920
4) 佐甲隆:コミュニティヘルスの展望~現場から考える地域保健の将来.公衆衛生74(3):194-198,2010
5) 佐甲隆:成果を出すマネジメントのコツ.保健師ジャーナル68(5):376-383,2012
6) 日本公衆衛生学会:公衆衛生モニタリング・レポート委員会報告書,2011
7) 原田規章:健康危機兆候の早期把握の重要性と今後の対応―公衆衛生モニタリング・レポート委員会の活動から.公衆衛生75(7):510-514,2011
8) 佐甲隆:地方分権と保健所.公衆衛生67(5):346-349,2003
9) 佐甲隆:保健所の役割と保健所長のリーダーシップ.公衆衛生73(2):107-112,2009
掲載誌情報