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特集 院内感染対策
抗菌薬の適正使用
著者: 朝野和典1
所属機関: 1大阪大学医学部附属病院感染制御部
ページ範囲:P.898 - P.901
文献購入ページに移動抗菌薬の「適正使用」というときには,抗菌薬が標的とする感染症およびその原因微生物に対して適正な選択であるか否かを判断することが前提となる.しかしながらその判断は極めて困難である.その理由として,感染症の診断の難しさがまず挙げられる.例えば,肺炎の原因菌はいまだに確定診断できない.喀痰から細菌が培養,分離,同定されたとしても,その細菌が肺炎の病巣である肺胞領域から由来するのか,気管あるいは口腔に由来するのかわからない.
そのため,肺炎のガイドラインでは,原因微生物を確定するためには,気管支鏡を用いて病巣局所からの汚染を避けた検体の採取が必要であるとされている1).しかし,そのような侵襲的な検査は日常臨床ではほとんど行われないのが実情である.また,感染症の専門医が少ないため,各医療機関において,抗菌薬の適正性を判断できる人材がいないという根本的な要因もある.このように,抗菌薬の適正使用を実施するためには,極めて高いハードルが横たわっている.
しかし,一方で,多くの病院が取得している診療報酬上の感染防止対策加算には,「院内の抗菌薬の適正使用を監視するための体制を有すること.特に,特定抗菌薬(広域スペクトラムを有する抗菌薬,抗MRSA薬など)については,届出制又は許可制の体制をとること」という条件が付されている2).専門医でも困難な適正使用について,誰が,どのように判断して許可しているのであろうか.ここでは,抗菌薬の適正使用のあり方について,当院の例を挙げながら考察してみる.
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