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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生77巻12号

2013年12月発行

文献概要

特別寄稿

未来図を描く公衆衛生活動in陸前高田③―新たに生まれている「格差」と向き合うために

著者: 佐々木亮平1 岩室紳也2

所属機関: 1岩手医科大学 いわて東北メディカル・メガバンク機構 臨床研究・疫学研究部門 2公益社団法人地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター

ページ範囲:P.1001 - P.1005

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新たな格差

 発災直後の避難所生活では,とにかく生きていくための環境整備がすべての人に共通したニーズであり,未来図のような計画がなくても,現地の状況がよくわからない全国からの応援者も,生きていくというその一点を目指した対応や支援ができた.避難所から仮設住宅に移る際も,早く移れる人,遅くなる人がいても,結果的にはどちらも「仮設住宅」に移ることに変わりはなかった.しかし,2年半余り経ったいま,仮設住宅から次の住処(すみか)に移る際に大きな差,新たな格差が出てきた.

 仮設住宅に2年以上暮らし,それなりに近所づきあいも生まれ,コミュニティが形成されていると考えられている仮設住宅から出る際に,近所への挨拶ができないまま夜逃げのような形で仮設住宅を出る方が少なくないという声が聞かれるようになった.今の時点で仮設住宅を出られる人は自力再建できた人たちである.その一方で,完成がまだ先になる公営の災害復興住宅への入居を余儀なくされている人がいる.家族を含めた被災状況,年齢,仕事,貯金といった個々人の異なる様々な状況の中で,避難所から仮設住宅までは同じ環境で生活していた者が異なる生活を余儀なくされはじめるのがこれからの現実であり,自力再建ができる者からすれば,自分だけが喜んでいるわけにはいかないという思いになる.

参考文献

1) 佐々木亮平:専門支援チーム撤退がもたらす新たな力―復興へ向かう陸前高田市の今・第七報.地域保健42(11):60-67,2011
2) 佐々木亮平:東日本大震災が警鐘する地域保健活動のこれから―岩手県陸前高田市での活動から見えてきた津波災害への対応.地域保健42(5):72-79,2011
3) 佐々木亮平:「支援」の終わり「協働」の始まり―復興へ向かう陸前高田市の今・第十一報.地域保健43(3):66-73,2012
4) 佐々木亮平,岩室紳也:災害を支える公衆衛生ネットワーク 東日本大震災からの復旧,復興に学ぶ・1.公衆衛生版トリアージの実際.公衆衛生76(4):53-56,2012
5) 佐々木亮平,岩室紳也:災害を支える公衆衛生ネットワーク 東日本大震災からの復旧,復興に学ぶ・9.こころのケアとは ポピュレーションアプローチの視点から.公衆衛生76(12):61-66,2012
6) 佐々木亮平,岩室紳也:未来図を描く公衆衛生活動in陸前高田①震災から3年目―本当の悲しみに公衆衛生は何ができるのか.公衆衛生77(6):466-270,2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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