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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生77巻2号

2013年02月発行

文献概要

特集 歯科口腔保健を巡る話題

咀嚼(噛むこと)の効用と嚥下障害

著者: 福田雅臣1

所属機関: 1日本歯科大学生命歯学部衛生学

ページ範囲:P.116 - P.121

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はじめに

 国民の歯の健康づくりを推進していく一環として,80歳で20本以上の歯を保とうという8020運動が提言され,四半世紀を迎えようとしている.平成23(2011)年歯科疾患実態調査結果によれば,8020達成者は38.3%(推計値)であると報告され,80歳の3人に1人以上が達成者であることが明らかとなった1).8020の数字の意味について,「80」は“高齢者になっても”,または“生涯を通して”という意味が込められていることは想像できる.では「20」に関してはというと,これは,少なくとも20本以上の歯があれば,ほとんどの食べ物を噛むことができる,すなわち食べ物をしっかりと“咀嚼”して美味しく食べることができるということからきている数字である.昨年7月に発表された健康日本21(第二次)における,歯・口腔の健康の目標の第1番目に「口腔機能の維持・向上(60代における咀嚼良好者の割合の増加)」が挙げられている2).すなわち,しっかりと噛むこと,噛めることを保持・増進することは,口腔保健の最重要課題であると言っても過言ではない.

 また,食育の分野に目を向けると,歯科保健分野からの食育を推進するために,平成21(2009)年には「噛ミング30(カミングサンマル)」というキャッチフレーズが作成された3).さらに,第2次食育基本計画では,食育の推進の目標に関する事項の中で,「よく噛んで味わって食べるなどの食べ方に関心のある国民の割合の増加」が示されている4).これらの活動は,よく噛むこと,咀嚼することの重要性を国民に広く認知してもらうためのメッセージであると言える.そこで本稿では,咀嚼(噛むこと)の役割,効果について解説するとともに,噛むことの大切さの伝え方,嚥下障害についても述べる.

参考文献

1) 厚生労働省:平成23年歯科疾患実態調査 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-23.html
2) 厚生労働省:国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_01.pdf
3) 内閣府:平成22年版食育白書,2010
4) 内閣府:平成23年版食育白書,2010
5) 食育支援ガイドブック作成委員会:歯科からアプローチする食育支援ガイドブック.医歯薬出版,2009
6) 歯科医学大事典編集委員会:歯科医学大辞典.医歯薬出版,1989
7) 全国歯科衛生士教育協議会:歯・口腔と予防に関わる人間と社会のしくみ1 保健生態学.医歯薬出版,2007
8) 小林義典:咬合・咀嚼が創る健康長寿.日本補綴学会雑誌3(3):189-219,2011
9) 日本学校歯科医会:健全な口腔機能育成のための指針.日本学校歯科医会,2006
10) 日本学校保健会:学校歯科保健実践事例集.日本学校保健会,2012
11) 田口享秀,他:嚥下運動.Clinical Neuroscience 27(12):1370-1371,2009
12) 厚生労働省:平成22年国民健康・栄養調査 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/h-22-houkoku-09.pdf
13) 聖隷三方原病院嚥下チーム:嚥下障害ポケットマニュアル.医歯薬出版,2001
14) 東京都摂食・嚥下機能支援推進マニュアル作成委員会:東京都摂食・嚥下機能支援推進マニュアル.2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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