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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生77巻2号

2013年02月発行

文献概要

特集 歯科口腔保健を巡る話題

子どもへの虐待と歯科

著者: 森岡俊介12

所属機関: 1森岡歯科医院 2前板橋区要保護児童対策地域協議会

ページ範囲:P.131 - P.135

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はじめに

 わが国では寿命の延伸により高齢者が増えてきているが,高齢者を支え,次世代を担う子どもの出生数は毎年減少しており,平成23(2011)年度には出生数が105万人強で過去最少となったことが厚生労働省人口動態統計で報告されている.その一方で,子どもの虐待に対応した児童相談所での対応件数は年々増加し,厚生労働省によれば,平成2(1990)年度には1,101件であったものが,10年後の平成12(2000)年には17,725件,さらに11年後の平成23年度には過去最高の59,862件となっている(図1).このために,出生数に対しての虐待相談件数割合が,平成23年度には平成2年度の60倍を超えている.

 このように,少子化が進む中で子どもの虐待が増加していく背景としては,地域の崩壊による近隣との関係の変化,家族の中での夫婦・親子関係の変化や,長期の経済不況により生じた貧困など,様々な要因があると考えられる.

 ところで,歯科医師は,母親が妊娠する前から乳幼児期さらには子どもが成人していくまで,生涯を通じた「かかりつけ歯科医」として子育てに関われる立場にある.そこで,次世代を担う子どもたちが,健やかに育つ環境づくりのための歯科の役割は,被虐児の口腔内状況を子どもの虐待に関わる職種に知ってもらうことと,歯科関係者が,子どもの虐待に関する知識と現状をよく理解し,歯科口腔保健の専門職として子どもの虐待と関わる行政や他職種との連携を図ることであると考える.

参考文献

1) 森岡俊介,他:歯科医師の児童虐待理解のために.財団法人口腔保健協会,2004
2) 丸山浩一,他:「児童虐待相談のケース分析等に関する調査研究」結果報告書.財団法人こども未来財団,2009
3) 才村純,他:子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について 厚生労働省社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会第8次報告,2012
4) 森岡俊介,他:児童虐待防止マニュアル.(社)東京都歯科医師会,2004
5) 東京都:東京の歯科保健.東京都福祉保健局医療政策部医療政策課,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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