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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生77巻3号

2013年03月発行

文献概要

視点

ひとりひとりの公衆衛生―図書館員として

著者: 磯野威1

所属機関: 1特定非営利活動法人日本医学図書館協会

ページ範囲:P.182 - P.183

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「パブリック」ということ

 1985(昭和60)年に自治体の設置する公共図書館(Public Library)から,国立公衆衛生院附属図書館(現,国立保健医療科学院図書館)へ異動したのですが,着任当初は「公衆衛生」という言葉を大して理解もせず,そこでの図書館の仕事をはじめていたと思います.しかし,今では公衆衛生(Public Health)は公共下水道,公共交通など,住民の生活基盤を支えている多くの「公共(Public=パブリック)」という言葉を冠される大切な概念だと思っています.特に昨春,退官してからは,地元,東京都練馬区の公共図書館,東京都立中央図書館,あるいは武蔵大学,東京大学など,公開されている図書館のヘビーユーザーとなりました.公共財の豊かさ,利用しやすさの大切さを,利用者の視点から実感する毎日です.

 公共図書館時代は,本を車に2,000冊ほど積み,住民の中を巡回する「移動図書館」を皮切りに,資料の貸出・提供,児童へのサービスを自治体全域で行うことが,私の仕事の柱でした.住民の「誰にでも」「どこでも」「いつでも」そして「求められるあらゆる資料」を無償で迅速に提供することが仕事の基本です.それは1970年代の「市民の図書館」の誕生と共に歩んでいたと思います.その仕事は「本を読むことは善である(本を読む力を育成する)」ことへの可能性に賭けることでもありました.表面的には,住民の利用率(登録率,貸し出し冊数)を上げることが重要な目標であり,そのためには資料購入費と人材の確保増強が生命線となります.毎年の数値が上がっていくことは,目に見える効果として,住民,議会などに報告・評価され,その結果は財政措置として反映されていきます.順調に進んでいる限り,日々の労苦は報われていきます.そして何より日々の仕事を支えてくれるのは,読みたい本を届けることができた時の利用者からの「ありがとう」というひとことです.特に子どもたちは素直に反応してくれます.まさに子どもは未来ですね.

参考文献

1) 柳沢文徳(著):食品衛生.共立出版,1952
2) H.D.ソロー(著),飯田実(訳):森の生活.岩波書店,2011
3) ゲーリー・スナイダー(著),重松宗育・原成吉(訳):野性の実践(新版).思潮社,2011
4) マンロー・リーフ(作),渡辺茂男(訳):けんこうだいいち.フェリシモ出版,2008
5) 神沼二眞(著):第三の開国―インターネットの衝撃.紀伊国屋書店,1994
6) アルベール・カミュ(著),清水徹(訳):シーシュホスの神話.新潮社,1969
7) S.R.ランガナータン(著),森耕一(監訳):図書館学の五法則.日本図書館協会,1981

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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