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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生77巻5号

2013年05月発行

文献概要

特集 若者の精神保健①

新型うつ病

著者: 野村総一郎1

所属機関: 1防衛医科大学校病院

ページ範囲:P.374 - P.377

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新型うつ病のイメージ

 「新型うつ病」と聞くと,「新型インフルエンザ」のように新たな病因に基づく新種の病気が出現したようなイメージを連想する.しかしこの用語は学問的に公認されたものではないし,学会などのシンポジウムで病態が論じられた形跡もない.これはもっぱら一般マスコミが番組キャンペーンや特集記事として「新型うつ病登場!」「これが新型うつ病だ!」のような形で用いる通俗的なコトバであろう.したがって,確固とした定義があるわけでもなく,その場その場で適当に使われているのが実情である.いや,「適当に」使われればまだしも,不適切な用い方も目立つ.このような誤解を招きやすい用語は,「学問的には用いるべきではない」と言うのが正論であり,筆者の立場でもある.

 しかし,医療現場や社会一般でも,この言い方がしっくりくると思われるような人が増えているという実態もある.だからこそ,広くマスコミで用いられ続け,本特集のようなアカデミズムの世界でも「新型うつ病について書いてほしい」という執筆依頼がくるわけである.これはやはり無視できない.ここはまず,この用語の意味するところをあらためて整理した上で,「現代社会のうつ病像の変化」,特に「青年期のうつ病論」という角度からで論じたい.なお,すでに述べたように筆者は「新型うつ病」という呼称を安易に用いることに反対する立場であるので,本稿でこの名前を用いるのは矛盾している.以下に「新型うつ病」と記した場合,全て「いわゆる新型うつ病」という意味合いであることをお断りしておく.

参考文献

1) 広瀬徹也:「逃避型抑うつ」について.躁うつ病の精神病理2(宮本忠雄編),pp61-86,弘文堂(東京),1977
2) 松浪克文,他:社会変動とうつ病,社会精神医学 14(2):193-200, 1991
3) 阿部隆明,他:「未熟型うつ病」の臨床精神病理学的検討,臨床精神病理 16:239-248, 1995
4) 加藤敏:職場結合性うつ病の病態と治療.精神療法 32:22-30, 2006
5) 樽見伸:現代社会が生む“ディスチミア親和型”.臨床精神医学 34:687-694, 2005
6) 野村総一郎(編著):多様化したうつ病をどう診るか,医学書院(東京),2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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