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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生77巻6号

2013年06月発行

文献概要

特集 若者の精神保健②

若者の薬物依存の治療

著者: 小林桜児1

所属機関: 1神奈川県立精神医療センターせりがや病院

ページ範囲:P.443 - P.446

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はじめに

 思春期発症の薬物依存患者と成人発症患者との最も大きな違いは,社会化の程度にある.若者の薬物依存患者の多くは複雑な生育環境を背負っており,不利な養育条件が多いほど,それだけ薬物乱用の発症リスクも増加する1).彼らはまさに社会化のプロセスの真っ最中に困難を抱えてしまっているのであり,しばしば最低限の対人コミュニケーションの技術や社会適応能力さえ不十分な状態で事例化する.地域医療,福祉,行政のさまざまな場面に登場する彼らと向き合う援助者にとって,その衝動的な言動や,複雑な背景を抱えた保護者とのやりとりは時に重い負担となり,燃え尽きや忌避感情の発生要因となることも少なくない.

 わが国では,思春期の薬物依存に特化した治療研究はほとんど皆無といってよい状況であるが,本稿では現状で可能な支援のあり方,考え方について概説したい.

参考文献

1) Dube SR, et al:Childhood abuse, neglect, and household dysfunction and the risk of illicit drug use:the adverse childhood experience study. Pediatrics 111:564-572, 2003
2) Douglas KR, et al:Adverse childhood events as risk factors for substance dependence:partical mediation by mood and anxiety disorders. Addict Behav 35:7-13, 2010
3) Schäefer I, et al:Childhood trauma and dissociation in patients with alcohol dependence, drug dependence, or both―Amulti-center study. Drug Alcohol Depend 109:84-89, 2010
4) Whitmore EA, et al:Developmentally informed considerations in comorbidity. Adolescent Substance Abuse, Cambridge University Press, Cambridge, 2006
5) Brown SA, et al:Clinical course of youth following treatment for alcohol and drug problems. Adolescent Substance Abuse, Cambridge University Press, Cambride, 2006
6) パウル・エンメルカンプ,他(著),小林桜児,他(訳):アルコール・薬物依存臨床ガイド―エビデンスにもとづく理論と治療.金剛出版,東京,2010
7) 松本俊彦,他:薬物・アルコール依存症からの回復支援ワークブック.金剛出版,東京,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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