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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生77巻6号

2013年06月発行

文献概要

特集 若者の精神保健②

薬物依存の若者への社会的支援活動の現状と課題

著者: 倉田めば12

所属機関: 1大阪ダルク 2

ページ範囲:P.461 - P.464

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はじめに

 大阪ダルクは1993年に大阪市内で開設した薬物依存回復施設である.20年間の活動の中で若い薬物依存者の相談は時々あるものの,実際に大阪ダルクにつながって回復の道を歩み始めた者の数は決して多いわけではない.

 時代の移り変わりとともに,大阪ダルクとその外郭団体であるFreedom(大阪ダルクは薬物依存当事者の相談,デイケアおよび入所プログラムの提供を行い,一方,Freedomでは,電話相談,家族の来所相談,家族プログラムの提供,啓発活動などを実施している)での薬物相談は,大きく次の3つのタイプに分けることができる.

 A群:薬物乱用,急性中毒.いまだ依存症には至っていない.使用初期の乱用者.脱法ハーブなどの急性中毒や処方薬のODなど.

 B群:薬物依存.薬物依存以外の精神疾患も特になく,薬物をやめてしばらくしたら,仕事に就いたり,家族との関係をやり直したりすことができる.

 C群:重複障害.薬物依存に加え,薬物依存以外の精神疾患を持っている.後遺症,統合失調症,うつ,気分障害,知的障害など.

 2006年の障害者自立支援法と2007年施行の「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」の施行によってダルクのあり様は様変わりする.C群の重複障害を持った薬物依存者の割合が年々増加していったのである.刑事施設からつながるケースが増えることにより大阪ダルクの利用者の8割近くが覚せい剤依存症者となってきており,20歳代後半~40歳代の年齢層が中核を占めている.しかも,その多くが重複障害者であり,制度に連動する施設としての質の変容は明らかであった.だが,若い薬物依存者,乱用者の多くは,A群,B群に属しており,もっと若者の回復にスポットを当てるならば支援の枠組みを問い直す必要があるだろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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