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国際保健協力の人材育成を考える
著者: 綿引信義1
所属機関: 1国立保健医療科学院国際協力研究部
ページ範囲:P.426 - P.427
文献購入ページに移動わが国は,超少子高齢・人口減少社会に入り,今後四半世紀は年齢構造,死因構造および地理的人口分布も大きく変化し,それに影響を受けていく中で,健康問題も複雑・多様化していくことが予想される.さらに,インターネットが普及し世界のグローバル化・フラット化が進行するなど社会構造も大きく変わってきた.それに伴い住民の保健ニーズも変化し,これらに対応する保健医療分野の人材育成とその資質の向上が喫緊の課題といえる.
例えば,「地球規模の課題として新型インフルエンザ,HIV/AIDS,糖尿病をはじめとする生活習慣病,高齢化社会への対応といった保健関連問題の解決リーダーシップをとれる人材を育成する」を1例とすれば,①今後を見据えた社会ではどのような人材が求められているのか,②どのようなコンピテンシー(特定の職務や状況下において,期待される成果に結びつけることのできる個人の行動様式や思考特性)を身に付ける必要があるのか,および③具体的なカリキュラムはどうあるべきかなど,直近の課題解決だけでなく,10年後,20年後に求められる保健医療分野の人材像をできるだけ具体的に考えていかなければならない.
このような状況に対応するため保健システムの一環である良質な保健医療サービスの提供を担う保健医療人材の量的拡大,人員配置や構成などの量的問題と資質(コンピテンシー)の向上が緊急課題となっている.米国の公衆衛生分野を見ると,公衆衛生大学院,行政機関および研修センターにおいて公衆衛生プロフェッショナルの育成は,共通コンピテンシー,あるいは専門分野別コンピテンシーに基づく教育・研修が主流となっている.今回は,国際保健医療協力の場における職務課題の1つである個々人が協力的にかかわり合いながら課題に取り組むことによって期待される最終成果を得るプロジェクトを想定し,以下8つの技術領域にわたる共通コンピテンシー,①分析・評価能力,②公衆衛生学の基本能力,③文化的コンピテンシー,④コミュニケーション能力,⑤コミュニティにおける公衆衛生実践能力,⑥財政計画とマネジメント能力,⑦リーダーシップとシステム思考,および⑧政策策定とプログラム策定の向上を目指した海外合同臨地訓練(海外合臨),を例として考えてみたい.
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