icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生77巻7号

2013年07月発行

特別寄稿

安全な物的環境を考える

著者: 筧淳夫1

所属機関: 1工学院大学建築学部

ページ範囲:P.554 - P.558

文献概要

はじめに

 人と環境との関係を考えるとき,人が行動を起こすことによって周辺環境に影響を与えることもあれば,人を取り巻く環境によって行動が支配・影響されることもある.山本多喜司とS.ワップナーの編著「人生移行の発達心理学」1)によると,人間と環境の間のシステムを双方向の関係でとらえる相互交流主義(transactionalism)においては,人間を「身体・生物的側面」,「心理的側面」,「社会文化的側面」の3つの側面から捉えるとともに,もう一方の環境を「物理的側面」,「対人的側面」,「社会文化的側面」のやはり3つの側面から捉えて整理している.

 医療安全においても,インシデントやアクシデントを分析し,適切な対策を講じるためには,医療スタッフを「医療従事者や患者の健康状態や身体的な能力(身体・生物的側面)」,「どのような心理状態でその作業に望んでいたのか(心理的側面)」,「職種や役割としてどのようなことが求められていたのか(社会文化的側面)」といった側面で捉えることができる.またその時の環境を,「医療従事者の作業や患者の日常生活がどのような作業・生活環境の中で行われ営まれていたのか(物理的側面)」,「第三者を含めた人間関係はどのような状況であったのか(対人的側面)」,「医療行為の法的・社会的位置付けがどのようなものであったのか(社会文化的側面)」など多角的な視点からの分析が必要である.このようにさまざまな要因が絡み合って発生する医療事故を分析する際に,物的環境のみを取り上げることには本質的な限界があるが,ここではこれまであまり振り返られることの少なかった,医療施設内の適切な物的環境と医療安全について考えてみたい.

参考文献

1) 山本多喜司,他(編著):人生以降の発達心理学.北大路書房,1991
2) 平成15・16年度厚生労働科学研究費補助金(医療技術評価総合研究事業)「医療施設における療養環境の安全性に関する研究」研究代表者三宅祥三(武蔵野赤十字病院前院長)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら