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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生78巻11号

2014年11月発行

文献概要

特集 脳血管疾患最前線

わが国の脳血管疾患の現状と動向

著者: 綿引信義1

所属機関: 1国立保健医療科学院 国際協力研究部

ページ範囲:P.734 - P.738

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はじめに

 日本は超少子・長寿高齢社会が進行し,総人口も減少している.人口構造,死因構造ならびに人口分布も変化してきている.65歳以上の高齢者人口は,2012年に3000万人を超え,高齢化率は24.1%となり,2025年には3657万人(30.3%),その内,後期高齢者人口(75歳以上人口)は2179万人(18.1%)と推計されており,前期高齢者人口(65〜74歳)を上回るとされている1)

 また,厚生労働省「平成25年簡易生命表」によると,男の平均寿命は80.21年と初めて80年を超え,女のそれは86.61年となり,長寿高齢社会が急速な勢いで進行していることが見て取れる.そして,近年,急速なグローバル化によって社会構造が変わり,健康問題も複雑化・多様化してきている.

 このような社会において,わが国の死因構造も大きく変わってきている.1960年以降現在に至る過去50年間の主要死因は,脳血管疾患,悪性新生物および心疾患である.脳血管疾患は,1960年代をピークに1980年まで第1位の死因であった.2012年の人口動態統計の死因簡単分類をみると,脳血管疾患は悪性新生物,心疾患,肺炎に続いて第4位の死因となっており,その死亡率は減少傾向にある.

 1970年以降,明らかに脳血管疾患の死亡率は低下傾向を示しているが,いまだ脳血管疾患が大きな問題となっているのは,発症後の後遺症による要介護の割合が高く,健康日本21(第2次)の目標である健康寿命の延伸と都道府県格差の縮小を実現するための最大阻害要因になっているからである.

 そこで,本稿では,1960年以降2012年までの当該年の人口動態統計,10月1日現在推計人口および国勢調査結果を用い,脳血管疾患の死亡数・死亡率の年次推移をはじめ,都道府県別年齢調整脳血管疾患の推移,そして,脳血管疾患の発症率,介護の状況についても触れながら,わが国の脳血管疾患の死亡数・死亡率の動向と現状について述べる.

参考文献

1)国立社会保障・人口問題研究所:日本の将来推計人口(平成24年1月推計)
2)Kubo M, et al:Secular Trends in the Incidence of and Risk Factors for Ischemic Stroke and Its Subtypes in Japanese Population. Circulation 118:2672-2678, 2008
3)清原裕:心血管病の時代的推移と現状:久山研究.脈管学48:443-448, 2008
4)Hata J, et al:Secular Trends in Cardiovascular Disease and Its Risk Factors in Japanese:Half-Century Data From the Hisayama Study(1961-2009). Circulation 128(11):1198-1205, 2013
5)由利組合総合病院:秋田の脳卒中—脳卒中発症登録でわかること—1950年代から2010年までの実態,危険因子と予防.2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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