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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生78巻2号

2014年02月発行

文献概要

特集 予防接種

予防接種行政に求められていること

著者: 中山ひとみ1

所属機関: 1霞ヶ関総合法律事務所

ページ範囲:P.75 - P.79

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はじめに

 もう15年も前のことになるが,急性脳症で死亡したお子さんの両親から,治療行為が適切でなかったために死亡したのではないか,という相談を受けたことがある.医療過誤の疑いの相談を受けた場合,弁護士はカルテを入手し,医学文献を調べながら問題点を整理するのだが,所詮,医学的には素人に過ぎないので専門家の協力を仰ぐことになる.小児科の専門医は,高熱を発してからの治療行為に不適切な点はなく,死亡という結果は不可抗力だとの見解であった.「ワクチンさえ打っておけば助かった」と言った専門医の残念そうな表情が今も忘れられない.その際,いかに日本がワクチン後進国であるかというご意見も拝聴した.

 その一方で,予防接種により,重篤な副作用・副反応が生じることも事実である.予防接種によって被害を受けた児やその家族が,いかに悲惨な状況におかれ,人生を狂わされたかということは,裁判記録を見れば明らかである.死亡や重篤な後遺障害が生じた者やその家族にとっては,まさに「予防接種さえ受けなければ」ということになるのであろう.

 予防接種行政に何が求められるかは,端的にいえば,上記のように予防接種を受けられなかった場合の「被害」と,受けた場合の「被害」を最小限にすることに尽きると考えられる.

参考文献

1)手塚洋輔:戦後行政の構造とディレンマ 予防接種行政の変遷.藤原書店,2010
2)岩田健太郎:予防接種は「効く」のか? ワクチン嫌いを考える.光文社新書,2010
3)秋山幹男・河野敬・小町谷育子(編):予防接種被害の救済 国家賠償と損失補償.信山社,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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